宇宙産業の新たな担い手を和歌山から 企業と大学が連携しプロジェクト始動
2026年3月1日、和歌山県串本町から小型ロケット「カイロス3号機」の打ち上げが予定されている。この打ち上げが成功すれば、国内民間企業として初めて人工衛星の軌道投入を達成する歴史的な瞬間となる。この宇宙開発の動きを背景に、和歌山県内では地元企業と大学が連携した新たなプロジェクトが動き出している。
地元企業6社とスタートアップが新会社「WALL」を設立
昨年秋、和歌山県でものづくりなどに携わる企業6社と、超小型人工衛星開発を手がけるスタートアップ企業「アークエッジ・スペース」(東京)が共同で新会社「WALL」を設立した。同社は2028年を目標に人工衛星を製造し、カイロスロケットでの打ち上げを計画している。
WALLの有井安仁社長は「日本企業にはすでに十分な技術が備わっている」と強調する。同社が開発を進める人工衛星は、地上のセンサーで収集したデータを中継する「宇宙の中継器」としての役割が期待されており、新たな宇宙ビジネスの創出を目指している。
和歌山大学との連携でクリーンルームを設置
今年2月中旬、WALLと共同研究を進める和歌山大学(和歌山市栄谷)を訪れると、研究室の一角に特設ブースが設けられていた。全面をビニールで覆ったクリーンルームが完成しており、ここが人工衛星の組み立て作業の現場となる。
同大学で長年宇宙研究や教育に携わる秋山演亮教授は「地元から宇宙産業の担い手を育成することが重要だ」と語る。このプロジェクトでは、学生が実際の人工衛星開発に参加することで実践的な技術と知識を習得できる環境を整備している。
カイロスロケットの挑戦が地域に新たな機会を創出
今回のカイロス3号機打ち上げは、2024年3月の初号機、同年12月の2号機に続く三度目の挑戦となる。成功を待つ間、発射場のある和歌山県内では宇宙関連産業の育成に向けた動きが活発化している。
地元企業と大学の連携は、単なる人工衛星開発だけでなく、長期的な人材育成システムの構築を目指している。秋山教授は「宇宙産業は今後さらに成長が見込まれる分野であり、地元の若者にとって大きな職業選択肢となる可能性がある」と期待を寄せる。
WALLのプロジェクトは、技術開発だけでなく、地域経済の活性化や次世代人材の育成という多面的な意義を持っている。和歌山から始まるこの挑戦が、日本の宇宙産業全体の発展にどのような影響を与えるか、注目が集まっている。



