金沢三茶屋街の一つ、主計町の茶屋「仲乃家」で2日、芸妓の新花が誕生する。宇都宮市出身の光流さん(22)は日本舞踊や邦楽の経験がないまま、新たな世界に飛び込んだ。女将は「自分の色を出しながら、失敗を恐れずに挑戦してほしい」と期待を寄せる。
未経験からの挑戦
お披露目を控えた5月20日、浅野川沿いの事務所で、光流さんは着物姿で稽古に励んでいた。師匠の寿柳寿々司朗さん(72)の視線や首の角度をじっくり観察しながら、同じ演目を繰り返し練習。顔をほてらせ汗をぬぐう姿に、寿々司朗さんは「布巾をたもとに入れておくといいよ」と優しく助言した。
光流さんは高校の修学旅行で初めて金沢を訪れ、主計町茶屋街の静かで情緒ある街並みに魅了された。新潟大学進学後も再訪し、普段非公開の稽古を見学できる体験会に参加。日本舞踊の経験はなかったが、優雅な芸妓の姿が忘れられず、芸の道を志した。大学4年で同級生が就職活動に励む中、昨夏に仲乃家のSNSへ芸妓志望のメッセージを送った。
女将と師匠の支え
連絡を受けた4代目女将の桃太郎さんは、三茶屋街の芸妓が一堂に会する「金沢おどり」に光流さんを招待。芸妓の世界を間近で見てもらい、熱意を確かめた上で、月1回の踊り、三味線、鼓の稽古が始まった。今春からは午前中に稽古、夜はお茶屋の手伝いをこなす日々だ。
師匠の寿々司朗さんは「熱心で覚えが早い」と目を細める。芸名「光流」には、桃太郎さんから「茶屋街の希望となり、浅野川の流れのように伝統を継承してほしい」との願いが込められている。
お披露目と今後の抱負
7月に始まる川床の席で場数を踏むため、お披露目はこの時期に設定された。光流さんは「わくわくする暇もないほど学ぶことがたくさんある。踊りも演奏も両方できるようになりたい」と意欲を見せる。
芸妓文化の次世代育成
金沢市などは、芸妓文化の次世代担い手確保に向け、「一見さんお断り」のお茶屋でお座敷を体験できる催しや、芸妓の稽古を見学する機会を設け、裾野拡大を図っている。今年度は29日間、5000円(大学生以下2500円)で芸妓の唄や踊り、お座敷遊びを1時間体験できる「金沢芸妓のほんものの芸にふれる旅」を実施。ひがし茶屋街周辺の徳田秋声記念館では、2013年からおおむね年1回、芸妓と一緒にお座敷遊びを楽しむイベントが開かれている。また、普段非公開の稽古を見学できる体験会も定期的に開催。光流さんのほか、昨年12月以降に三茶屋街でお披露目された2人も舞踊未経験の県外出身者だ。
金沢市文化政策課の山岸瑞穂課長は「催しを通じて金沢芸妓の魅力が県外の若い世代に届いており、大変うれしい。今後も育成支援を継続していきたい」と話している。



