名古屋市図書館の命名権、企業の反応が予想外に低調
名古屋市教育委員会が市立図書館のネーミングライツ(命名権)を巡り、企業の応募が極めて少ない状況に頭を悩ませている。昨年度、鶴舞中央図書館を除く20館の分館でスポンサー募集を行ったが、契約が成立したのはわずか1館のみだった。市教委は本年度も再募集を実施する方針で、周知活動の強化に力を入れる構えだ。
唯一の契約は東図書館、年間420万円で4年間
命名権制度は、図書購入費などの財源確保を目的として導入された。市教委は当初、昨年5月に20館まとめて年間最低契約金額4800万円という条件で募集を開始したが、応募はゼロ。10月には方針を転換し、1館ごとの個別募集に切り替えた。
その結果、唯一応募があったのが東区大幸にある東図書館だった。命名権を獲得したのはエネルギー供給会社のカニエJAPAN(蟹江町)。同社は「図書館をサポートすることで、市民生活を根幹から支える企業でありたい」と応募理由を説明している。
特に、バンテリンドームナゴヤに隣接する立地の良さに着目し、「市内外から多くの来館者が見込める」と判断したという。契約期間は2030年3月末までの4年間で、命名権料は年間420万円(税別)。今月1日から「東図書館 supported by カニエJAPAN」として運用が始まっている。
財政逼迫の中での図書購入費確保が課題
名古屋市の本年度当初予算における図書購入費は約1億5千万円。市財政が逼迫する中でも、市教委内部での調整により昨年度並みの水準を確保したものの、予算に余裕があるわけではない。
市教委は今後、東図書館以外の19館に加え、鶴舞中央図書館でもスポンサー募集を実施する方針だ。鶴舞中央図書館については、2024年にも募集を行った経緯がある。当時は工業用ゴム製造・開発のゴムノイナキ(中区)が年間600万円(税別)の3年契約で応募したが、半年後に辞退している。
辞退理由は「都合により」とされたが、愛称を「ゴムノイナキ鶴舞中央図書館」とする案に対して、市民から「企業の図書館だと誤解される」「図書館は命名権にそぐわない」といった批判が相次いでいた背景がある。
市民理解を得るための工夫と今後の課題
市教委はこうした批判を踏まえ、「図書館名 supported by 企業名」という形式を採用することで、市民の理解を得たい考えだ。また、各館の入館者数に応じて契約金額の最低価格を設定する仕組みも継続する。
担当者は応募が少ない現状について、「金額設定の問題なのか、周知が不足しているのか」と苦悩を隠さない。「どうしたら企業に手を挙げてもらえるのか、真剣に考えていきたい」と語っている。
図書館の命名権制度は、全国的に見てもまだ普及段階にある。名古屋市の事例は、公共施設と企業の協働における課題を浮き彫りにしている。市教委は今後、以下の点に重点を置いて取り組む方針を示している。
- 企業への周知活動の強化と制度内容の明確化
- 市民への説明を徹底し、理解促進を図ること
- 契約条件の見直しを含めた制度改善の検討
財政難が続く地方自治体にとって、新たな財源確保の手段として注目される命名権制度。その成否は、市民と企業双方の理解と協力にかかっていると言えそうだ。



