阪神電鉄「ゼロカーボンベースボールパーク」が地域と育む若虎の聖地、脱炭素で新たな魅力
阪神電鉄「ゼロカーボンベースボールパーク」が地域と育む若虎の聖地

阪神電鉄「ゼロカーボンベースボールパーク」が地域と育む若虎の聖地、脱炭素で新たな魅力

阪神電気鉄道が整備した「ゼロカーボンベースボールパーク」(兵庫県尼崎市)は、プロ野球・阪神タイガースのファーム(二軍)施設として昨年3月に開業しました。この球場は、ファンから「選手が間近で見られる」と好評で、昨シーズンには球界では異例の約20万人が訪れ、大きな注目を集めています。チームが地域に溶け込み、地元住民と共存できる場所を目指す取り組みが進められています。

3者の思惑が一致し、脱炭素を掲げた移転が実現

2017年、当時阪神タイガースの経営企画担当だった松尾英孝さん(43)は、二軍が練習する阪神鳴尾浜球場(兵庫県西宮市)のナイター設備不足や室内練習場の手狭さを課題に、新たな候補先を探していました。松尾さんは「訪れた子どもたちがタイガースを好きになり、野球を始めるきっかけになる場所に」との理想を描いていましたが、球団の一存では決められませんでした。親会社の阪神電気鉄道が「沿線価値の向上」を掲げていたためです。

その頃、尼崎市の担当者から、南部の都市公園への移転が提案されました。市は、公園内に太陽光発電や蓄電池を導入するなど、温室効果ガスの排出ゼロを意味する「ゼロカーボン」を目標に掲げ、脱炭素に取り組むエリアとして街のイメージ向上を図る狙いがありました。阪神電気鉄道にとっても、大物駅から徒歩5分圏内で、電車から試合の様子が見える立地の良さは魅力的でした。こうして、球団、阪神電気鉄道、尼崎市の3者の思惑が一致し、移転が決まりました。

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練習環境の充実とファンとの距離縮める工夫

チームがパークの設計でこだわったのは、練習環境の充実です。球場「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」は、本塁からバックスクリーンまでの方角や、黒土と芝の使い方など、甲子園球場の“再現”に挑みました。ナイター照明も6基設け、夜間の試合が可能になりました。

ファンと選手の距離を縮める工夫も凝らされています。球場のスタンドを拡大し、収容人数は鳴尾浜の9倍近い約4400人に増やしました。隣のグラウンドとの間にはファンが行き来できる周遊コースを設け、キャッチボールや守備練習に励む選手の息づかいを感じられるようにしました。昨年3月の開業後、来場者からは「タイトルを取るような選手の練習を近くで見ることができた」などの声が寄せられ、練習終わりに選手がサインに応じる光景も増えています。タイガースの営業を担当する矢浪峻介さん(37)は「チームや野球を好きになってもらうには、選手との握手や会話が最も効果的だ」と語っています。

地域との共存を重視し、イベントで活気づくパーク

シーズン終盤の昨年9月には、市と球団の共催で、パーク全体を使った「あまトラフェス」を開催しました。野球のイベントやチアリーダーの体験企画、キッチンカーの出店など、ふだんは野球に興味のない子どもも含め、会期の2日間で約1万9000人が訪れ、大いに賑わいました。

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パークが「地元との共存」を重視する背景には、球団と阪神電気鉄道、尼崎市の3者での協議があります。選手が活躍する球場のそばに遊歩道を作ったり、市民が利用する軟式野球場を設けたりと、住民の居場所も確保しました。今では、試合がない日でも、パークには散歩に訪れる近所の人や放課後に遊ぶ子どもたちの姿があり、地域に根ざした施設として定着しています。阪神電気鉄道に移った松尾さんは「この地域にとって、タイガースが身近な日常の風景になり、思い描いた理想の姿になった」と胸を張っています。

阪神電気鉄道は、1899年に「摂津電気鉄道」として設立され、1905年に大阪―神戸間で営業を開始しました。事業領域は不動産やレジャーなど幅広く、傘下に阪神タイガースがあります。2006年の経営統合で、阪急阪神ホールディングスの中核事業会社となり、24年度の営業収益は867億円、社員数は1547人(25年4月)です。本社は大阪市福島区にあります。