里子を我が子に、特別養子縁組で結ばれた家族の絆 島根の40代女性が語る
里子を我が子に、特別養子縁組で結ばれた家族の絆

島根県内に住む40歳代の女性は、10年以上前に里親として赤ちゃんの長男を迎え、後に特別養子縁組を結んだ。「私たち夫婦に幸せな暮らしを与えてくれました」とほほえむ。今は中学生になった長男について、「授業参観に来てほしいみたいです。甘えたがりでまだまだかわいいですよ」と話す。

不妊治療を経て里親に

女性は20歳代半ばで結婚。子供ができず、約1年後、不妊治療クリニックを夫婦で受診したところ、妊娠しにくい体質と分かった。治療したがうまくいかなかった。

30歳代になり、「子供を育てたい」との思いが募り、県内の児童相談所で里親について聞き、「養子縁組里親」を知った。

特別養子縁組への決意

里親は、里子を一定期間預かる「養育里親」が一般的で、里子は実の親との間に戸籍上の親子関係を維持している。里親が長期間育てたとしても、あくまで里子は「預かっている子」で、後に実親に引き取られるケースも珍しくない。これに対し、養子縁組里親は養子縁組を結ぶことが前提で子供を迎え入れる。実親との法律上の親子関係を解消し、里親と里子の間で新たに親子関係を結ぶ「特別養子縁組」を選ぶのが一般的とされる。

「里子を我が子として育てたい」と、養子縁組里親になることを心に決め、養成研修を受講し、2012年に登録された。

赤ちゃんとの出会い

同じ年のある日、児童相談所から「もうすぐ生まれる赤ちゃんがいる。会いますか」と連絡があった。夫婦で話し合い、会うと決め、生まれてすぐに県内の乳児院で面会した。すやすや寝ている姿がいとおしかった。

数日に1回会いに行き、ミルクをあげたり、もく浴をしたりと、大変ながらも心が満たされた。約3か月後、自宅に引き取った。制度上、すぐに特別養子縁組を結ぶことはできないが、心を込めて育てた。よく笑う子で大病もなくすくすく成長し、「我が子として育てたい」という思いは揺らぐことはなかった。家庭裁判所の審判を受け、13年に許可が下り、特別養子縁組が成立。名実ともに母親となった。

「二人の母親」の真実

長男に産みの親ではないことをいつ、どういう形で打ち明けるか。夫婦で「いつか自然に言えたらいいね」と話し合っていた。長男が4歳の頃、テレビドラマの出産シーンを見た長男が「僕もこうやって産まれたの」と尋ねてきた。「産んでくれたお母さんが別にいるんだよ」と返した。

長男は困惑し、親の愛情を試すような行動が増え、離れるとすぐに泣いた。「言葉にならない不安を感じていたように思う」。約1年間、不安定な状況が続いた。小学校低学年の頃は「産んでくれたお母さんに会いたい」と言うこともあったが、高学年以降は何も言わなくなった。話題を向けても「その話はいいから」と遮られる。

一方で、いつか産みの親に会わせてあげたいと考えている。小学2年の頃、「(産みの親に)『こんにちは』と言いたいな」とつぶやいた長男の姿が忘れられない。「二人の母親」がいることを否定しないでほしいとの思いからだ。

長男は夫婦にとって何よりも大切な存在だ。「命をなげうってもいい。うちの子になってくれて、ありがとう」。心からそう思える。里親制度から紡がれた家族の形。1人でも多くの人に養子縁組里親という制度を知ってほしいと願ってやまない。

里親制度の現状

養子縁組里親は2024年度末で全国で7677世帯が登録し、377世帯に子供が委託されている。県内では25年度末で63世帯が登録し、1世帯が将来的な養子縁組を視野に子供を預かっている。養子縁組里親への委託が少ないのは、我が子を養子に出すのを積極的に希望する実親が少ないことが大きく影響しているという。

特別養子縁組の養親は原則25歳以上、養子は原則15歳未満といった条件がある。特別養子縁組を結んだ場合、戸籍に実親の名前は記載されない。これに対し、「普通養子縁組」は実親の名前が記載される。