試用期間中の従業員について、期待した能力や適性を満たさない場合、試用期間の満了時に本採用を拒否できるのか。社会保険労務士の佐藤敦紀氏が、その可否と判断のポイントを解説する。
本採用拒否は可能か
本採用を拒否すること自体は可能です。ただし、「試用期間だから」という理由だけで簡単に認められるわけではありません。
重要なのは、「能力が足りなかった」という会社側の評価だけで終わらせず、その理由を客観的に説明できる状態にしておくことです。
客観的な理由と記録の重要性
例えば、日報などを用いて、どのような仕事を任せ、どこでつまずいていたのかを記録します。その上で、会社がどのような指導や教育を行ったのか、それでも何が改善しなかったのかまで残しておきます。
「仕事ができない」「コミュニケーションが苦手」といった抽象的な評価だけでは、会社側の主張は受け取られかねません。どの業務で、どのような問題が起きていたのかを具体的に示すことが重要です。
遅刻や欠勤などの勤怠上の問題であれば記録が残るため、客観的な理由を示しやすいでしょう。一方、能力や適性を理由にする場合ほど、何ができていなかったのか、その事実を具体的に残しておく必要があります。
中途採用と新卒採用の違い
また、中途採用と新卒採用では、本採用拒否を判断する際の事情も変わります。
中途採用では「この仕事を任せる」「この程度の経験やスキルを求める」といった採用時の期待が新卒採用より明確です。そのため、求めていた水準に達していなかったことも説明しやすくなります。
一方、新卒採用では、入社時点で担当業務や求める能力がはっきり定まっていないことも少なくありません。その状態で「能力が足りない」という理由だけを挙げても、本採用拒否の根拠としては弱くなりやすいでしょう。
本採用を拒否する可能性があるのであれば、試用期間が終わる直前になって判断するのは遅いです。期間中から問題点を伝えて改善を求め、その経緯を記録しておくことが重要です。
会社が見るべきなのは「試用期間中に期待通り働けたか」だけではありません。何を求め、何ができず、会社がどう指導し、それでも何が改善しなかったのか。そこまで説明できる状態にしておく必要があります。



