文部科学省は、国公私立の小中高校などで働く教員が大学在学中に国から貸与された奨学金の返還を免除する方向で検討に入った。約30年ぶりに奨学金返還免除制度を復活させるもので、質の高い教員のなり手確保や、教員不足の解消につなげる狙いがある。
新制度の概要と対象
文科省案では、新制度開始後に採用された教員の奨学金返還を、勤務年数に応じて全額または一部を免除する。導入前から勤務している教員も対象に含めるかどうかは今後の検討事項となっている。
日本学生支援機構が運営する国の貸与型奨学金は、無利子と有利子の2種類があり、利用には世帯年収や高校の成績などの条件を満たす必要がある。2024年度に無・有利子の奨学金貸与を受けた大学生は計約80万人。在学中に平均323万円を借り、返還にかかった年数は平均15年だった。
制度の歴史と廃止の経緯
返還免除制度は戦後の教員不足を背景に、1953年度に小中学校の教員向けに創設され、61年度には高校教員も対象に加わった。15年以上勤務した場合は全額免除、5年以上なら勤務期間に応じて一部を免除していた。
その後、民間企業への就職難などを背景に、公立学校の教員採用倍率は97年度に8・8倍に上昇。教員の給与水準が向上し、公平性の観点からも教員だけを優遇する根拠が乏しくなり、返還免除制度は98年度の大学入学者から廃止された。現在、国による教員対象の返還免除制度は大学院修了者向けのみがある。
教員不足の現状と今後の見通し
近年は人手不足などを背景に民間企業へ就職する学生が多く、全国的に教員のなり手確保が課題となっている。公立学校教員の2025年度採用試験で、倍率は初めて3倍を下回り2・9倍となった。公立学校に配置されるべき教員の欠員数は25年4月の始業日時点で、全国で4317人にのぼる。
文科省は来年度から、教職の魅力向上策に本格的に取り組む方針で、柱の一つに、奨学金返還の負担軽減を位置づける。早ければ27年の通常国会に日本学生支援機構法改正案の提出を目指す。文科省は法改正後、速やかに返還免除制度をスタートさせたい考えだが、最大で年数百億円が必要で、財務省との予算折衝は難航も予想される。
文科省によると現在、東京都や愛媛県など少なくとも11自治体が独自に返還免除を行っている。全国知事会は今夏、国レベルでの制度導入を政府に要望した。



