熊本地震の被災地で入浴支援にあたった海上自衛官3人が、現地での経験を振り返り、思いを語った。いずれも佐世保音楽隊の所属で、温かい湯とともに音色と歌声も届けた。
延べ1万2984人の隊員が支援
海自は延べ1万2984人の隊員で被災地支援にあたった。8月1日から9月3日まで、断水に見舞われた熊本県八代市の八代港などで入浴支援を行い、設営した入浴セットや艦艇内の風呂で被災者ら延べ5771人が汗や汚れを落とし、疲れを癒やした。
佐世保地方隊は5次隊まで派遣。2次隊で現地に入った鈴木広敬さん(52)は誘導を担当した。悲痛で重い雰囲気を想像していたが、小学校高学年くらいの男児3人組が元気いっぱいに風呂に入りに来る姿に、「明るく、前向きに災害に向き合っているんだな」と希望を感じたという。
音楽で寄り添う
日が落ちると、帰りのバスを待つテントでクラリネットを吹いた。寄り添えたらと、中島みゆきの「糸」やAIの「Story」を奏でた。アニメ「となりのトトロ」の「さんぽ」は子どもたちのリクエストで、大きな声で歌ってくれた。年齢層が高いと演歌を。被災者の涙に、こみ上げるものがあった。
「今必要なものは、音楽ではないのではないか」。長崎県佐世保市出身で同じ2次隊の山本妃乃さん(26)は出発当日の朝まで、楽器を持って行くかどうか葛藤していた。現地に着くと、台風に備えてたたんであった入浴セットを起こした。毎日朝から清掃し、浴室でサポートにあたった。
悩んだ末に、ホルンと約30曲の楽譜を持参。最後の3日間、唱歌「ふるさと」や坂本九の「見上げてごらん夜の星を」を夜更けの岸壁に響かせた。
現場で感じたこと
同県大村市出身で3次隊の加藤麻瑚さん(26)は、打楽器を担当し、演奏会ではボーカルとして歌うこともある。現地ではアカペラで歌うつもりだったが、京都から支援に来ていた舞鶴音楽隊の隊員がクラリネットとトランペット、フルートを吹いてくれた。SMAPの「世界に一つだけの花」は、隊員10人ほどが加わり、合唱になった。
脱衣所で案内などを担当し、「子どもを連れたお母さんたちの言葉から、少しずつ日常に戻っていることがうかがえた。音楽をしているだけでは分からないものを、現場で感じられた」と振り返る。自身の歌声に涙を流す被災者がいたと後で聞いた。
「つらい状況が続き、たまっているものが絶対ある。それを洗い流せる、はき出せる力添えができていたらいいな」と、今願う。



