都立井の頭公園(武蔵野市、三鷹市)の「井の頭池」でアオコが発生し、水面が緑色に覆われている。2010年代には、池の水を抜いて底を干す「かいぼり」を3回実施し、水質が改善。一時は、水中に太陽の光が差し込んだ美しい景観も、今は見られなくなっている。
水面は一面緑色、水中は濁って見えず
9月上旬に池を訪れると、水面は一面が緑色に染まっていた。池をのぞき込んでも自分の顔が映るばかりで、水中は濁って見えなかった。
公園の中心に位置し、神田川の水源でもある井の頭池は、かつて1日約1万トンの水が湧き、人々の生活用水としても使われていた。しかし、周辺の宅地化に伴って地下水のくみ上げ量が増えたことなどから、1960年代には湧水が枯渇。ごみの投棄などで水質が悪化し、度々アオコが発生するようになった。
3回のかいぼりで水質改善も、再び悪化
都は水質改善と外来種駆除を目的に、2013、15、17年度の3回、地元住民らとかいぼりを実施。池の透明度が増し、絶滅したとみられていた水草が約60年ぶりに確認された。アオコの発生も抑えられるようになり、SNSなどで「クロード・モネの名画『睡蓮』のよう」と話題になった。その後、かいぼりは行われていない。近隣住民らによると、今夏はアオコの発生が特に目立っていたという。
公園を管理する都西部公園緑地事務所は、昨夏からの少雨で池の水の循環が進まず、リンや窒素が多く含まれる泥が残り続けていることなどが原因と分析する。神田川につながる堰板の枚数を調整し、水位の上げ下げを行うなどして水の循環を促している。今月に入り、連日の雨で緑色は薄まりつつあるが、透明な池は戻っていない。
生き物への影響も深刻
生き物にも変化が見られる。かいぼり後は水中に多くの水草が広がり、水草を産卵場所とするイトトンボが集まるようになっていた。だが、同事務所の調査で今年5月に確認されたイトトンボはわずか56匹。昨年同時期の約1500匹から激減した。同事務所は、水の濁りで水中まで十分な光が届かなくなったことで、水草の生育に影響が出たことが原因とみている。
潜水して魚などを食べる水鳥のカイツブリも目撃数が減っている。池の保護活動に取り組む地元のNPO法人「生態工房」によると、21年以降は産卵したつがいが毎年7組以上確認されたが、今年は4~7月の一般的な繁殖シーズンが過ぎたにもかかわらず、3組(8月30日時点)にとどまる。井の頭公園で野鳥の観察を20年以上続けている写真家の高野丈さん(54)は「これまでもアオコが発生し、池の色が緑になることはあったが、今年は特にひどく、水鳥の生活に影響が出ている」と話す。
今後の対策は
生態工房の佐藤方博事務局長(53)は「かいぼりで水質が改善されることは実証済み。解決方法は分かっているのに動きが見られず、もどかしい」と話す。同事務所は、予算や人員の確保に時間がかかるとした上で、かいぼりの再実施について「この池の状態が何年も続けば検討していくが、まだその段階ではない」としている。
アオコに詳しい加藤憲二・静岡大名誉教授(地球環境微生物学)は「かいぼりから時間がたち、窒素やリンを含む泥が池の底にたまってアオコが発生しやすくなっているのだろう。池の水を循環させるのも有効だが、限られた地下水の量では厳しい。市民と協働することで自然に対する意識も育てるかいぼりが最適な対処法なのは確かだ」と指摘している。



