アメリカの大学選び:専攻から逆算する
アメリカの受験生は、まず将来の専攻を決め、その分野で評判の高い大学を調査する。理工系では学部での専攻がそのまま就職や大学院進学に直結するためだ。
東海岸では、バイオ・メディカル・エンジニアリングならジョンズ・ホプキンス大学、原子核物理ならプリンストン大学、ナノテクならペンシルベニア大学、宇宙航空ならジョージア工科大学、コンピューターサイエンスやAIならカーネギーメロン大学と、大学ごとに得意分野が確立している。
コンピューターサイエンスに特化した教育では、西海岸のカリフォルニア工科大学(カルテック)が有名だが定員が少なく、学生は東海岸のカーネギーメロン大学に流れる。UCLAやUCバークレー、スタンフォードもあるが、専攻を決めた受験生は「カルテックがダメならカーネギーメロン」を選ぶ。
ビジネス専攻でも同じ仕組み
ビジネス専攻でも事情は同じで、金融工学ならペンシルベニア大学、マクロ経済ならプリンストン大学やシカゴ大学、ジャーナリズムならコロンビア大学やシラキュース大学、国際関係ならジョージタウン大学やタフツ大学と、世評が確立している。旅行業マネジメントで国際的に評価されるコーネル大学は、この分野のキャリアを目指す高校生の憧れだ。
学部レベルでも即戦力となるスキルを教え、労働市場も評価する。例えば、ベンチャー企業が全国規模のマーケティングを展開する際、Eコマース専攻の若者を採用して任せることも多い。
将来、医科大学院や法科大学院を目指す場合、学部段階での専攻(プリメッドやプリロー)の評価や難関大学院への合格率を参考に大学を選ぶ。
ジョブ型雇用とメンバーシップ雇用の差
こうした制度は、グローバルスタンダードのジョブ型雇用と裏表の関係にある。日本では、資格が必要な士業や理系技術職を除き、官庁も民間もメンバーシップ雇用が多数派だ。社会人になって職種を変えながらジェネラリストを目指すのが出世の道で、入社時に大学での専攻は重視されない。偏差値の高い大学に合格したことや出身高校が重視され、学んだ内容は気にかけない。仕事に必要なことはOJTで教えるからだ。
しかしグローバルな世界ではそうではない。公務員を目指すなら法律と行政学、経理なら会計学や財務を大学で学んでいなければ採用対象にならない。日本では「大学の座学はムダ」と言われがちなマーケティングも、グローバルではウェブマーケティング、データサイエンス、SNS戦略の理論と最先端、デザイン理論を修めた若者を企業が必死に集める。
AI時代の複数専攻の意義
アメリカでは、主専攻と副専攻の2つの専門分野を勉強したい高校生が増えている。音楽家としてのキャリアを目指しながら法学を学ぶ、ファイナンスとアジア文化を組み合わせるなどが可能だ。両方の分野で評価の高い大学を志望校にする。専攻を決めてから志望校を絞り、実学系に加えて人文系の副専攻も学べるシステムは、AI時代の人材育成の方向に沿っている。



