日本語ワープロソフト「一太郎」を開発した浮川和宣氏(77歳)は、日本がハードウェア偏重から脱却し、ソフトウェア産業立国を目指すべきだと主張している。浮川氏は「ソフトの原材料は人間の知恵だ」と述べ、国土が狭く人口が多い日本の特性を強みに変えるよう訴えた。
「ソフトの原材料は人間の知恵」
浮川氏は、日本のように国土が狭く人口が多い国が今後どのように経済を維持していくかについて、「頭を使うソフトウェアが最も稼げるし、力を入れなければならない分野だ」と指摘する。同氏は「狭い国土に多くの人がいるということは、面積当たりの知恵も大きいということ」とし、ソフト分野を開拓すれば自動車のように世界に通用する産業に育つ可能性があると述べた。その結果、国民一人当たりの生産性や給料も上昇するとの見方を示した。
自動車メーカーなどの製造業が日本を豊かにしてきたが、浮川氏は「ハードウェアに頼るのはもう限界が来ている」と指摘。日本は狭い島国で工場建設が難しく、ものづくりに必要な資源の多くを輸入に頼っていると述べた。その上で「知力が物を言うソフトには無限の可能性がある」とし、日本は目に見えやすいハードに偏重する状態が続いてきたが、ソフトの重要性をより認識すべきだと強調した。
自動車でもソフトの役割が増大
浮川氏は、自動車や建設などあらゆる分野でソフトの役割が増していると指摘。自動車を例に挙げ、「ハードを作るよりも、自動運転などのソフトの方が高く売れる時代が来る」と述べ、日本はソフトウェア産業立国を目指すべきだと訴えた。
一方、浮川和宣氏の妻で、一太郎の開発を主導した初子氏(75歳)は、一太郎開発当時を振り返り、マイクロソフトが最新のOS(基本ソフト)の情報を事前に提供してくれたため、応用ソフトを作りやすかったと説明。当時は日本のパソコンメーカーが世界的に強く、日本メーカーの技術者がマイクロソフトの米国本社でWindowsの開発を手伝っていたという。ビル・ゲイツ会長も日本に一目置いており、パソコン市場における日本の存在感が高かったと述べた。
日本のアプリ開発者の厳しい現状
初子氏は、現在、日本発で世界展開できるアプリを開発するのは困難だと指摘。OSなどのプラットフォームを握る米国の巨大IT企業とほとんどつながりがなく、公開されている情報以上のことが分からないと述べた。巨大IT企業はアジアでは市場の大きい中国を向いており、ソフトの日本語化を中国で行っている例もあるとし、日本のアプリ開発者は厳しい立場に置かれていると語った。
初子氏は現在、夫と新しい会社「MetaMoJi(メタモジ)」を設立し、コンピューターと人の距離を近づけるソフト開発に注力。キーボードが苦手な人向けに、紙に書くように手書きで入力できるソフトを開発し、タブレット端末向けに提供している。「ソフトを通じて日本人を強くしたい」との思いで、様々なソフトの開発を続けているという。
浮川和宣氏と初子氏は、ともに愛媛大学卒業後、1979年に夫妻でジャストシステムを創業。和宣氏は社長として経営・営業を担当し、初子氏は専務・プログラマーとして一太郎などのソフト開発を主導した。2009年にそろって退社し、現在はソフト開発会社「MetaMoJi」を創業し、建設や教育向けのソフトを提供している。和宣氏は77歳、初子氏は75歳。



