ドルトン東京学園は、2026年8月31日から9月4日にかけて、中等部3年生を対象とした「探究旅行」を実施した。いわゆる修学旅行にあたるものだが、観光ではなく、地域が抱える課題について現地で学び、考えることを目的としている。
同校の中等部3年次の旅行行事は従来、研修旅行としてオーストラリアでのホームステイを実施してきたが、今年度より、同学年を対象とした旅行行事として初めて国内での探究旅行を実施した。生徒は国外(オーストラリア)と国内から選択でき、国内では山形県長井市・飯豊町と兵庫県姫路市の2コースを用意した。
国内の探究旅行の内容
国内の探究旅行では、地域住民や現地で活躍される事業者へのインタビューおよび街頭インタビュー、民泊、フィールドワークなどを通じて、人口減少をはじめとする地域課題を探究した。
この探究旅行の企画を担ったのがNTT東日本だ。ドルトン東京学園とNTT東日本は2022年、「新たな探究学習モデルの協創」と「地域の価値創造」を目的とした連携協定を締結。NTT東日本は、地域課題の解決や価値創造に取り組んできた地域との接点を生かし、今回の学習プログラムの設計などを支援した。
参加した生徒の声
山形県長井市・飯豊町コースには12人の生徒が参加。最終日の9月4日には、旅行中に交流した事業者らを前に、生徒たちが5日間で得た気づきや地域が抱える課題、そこから生まれた新たな問いについて発表した。
現地を訪れて変わった地域への印象について、参加した影山輝さんと吉田千夏さんが語った。吉田さんは、「自分の持っている問いに近い答えが見つかるのではないか」と考え、兵庫県姫路市ではなく山形県長井市・飯豊町を選んだという。「観光地として有名で、歴史のある姫路よりも、あまり知られていない場所にこそ本当の答えが見つかる」と期待していた。
5日間で印象に残った体験として、影山さんは農業体験と牛の世話を挙げ、「米沢牛を育てるのがどれほど大変なのかが実感できました」と話す。一方、吉田さんが挙げたのは地元の中学生との交流だ。「東京とはまったく景観が違っていても、人は変わらない」と感じる一方、地元の中学生から「カフェがない、遊び場がない」といった声を聞き、地域が抱える課題についてあらためて考える機会になったという。
実際に現地を訪れたことで、事前に抱いていた地域への印象にも変化があった。影山さんは「地方だとどうしてもサービスがシンプルになるのではないかと思っていましたが、まったく逆で、人が少ないからこそ一つ一つがすごく丁寧だった」と振り返る。吉田さんも、人口減少などの地域課題に対する取り組みを間近で見たことで、「大きく印象が変わった」と話した。
国内で「探究旅行」を始めた背景
ドルトン東京学園が従来のオーストラリアでのホームステイに加え、国内での探究旅行を始めた背景には、生徒の多様化がある。同校の及川寿幸先生は、「もともと我が校は帰国生が多く、すでに海外に住んでいた経験があることから、あらためて海外でホームステイする必要性がないと感じている生徒も多い」と説明。昨今の物価高を踏まえ、費用面でも国内という選択肢を用意したかったという。
国内の行き先に地方を選んだことにも狙いがある。及川寿幸先生は、「都会に住んでいると、地方が今どうなっているのかはなかなかわかりにくい」と話す。実際に地域を訪れて課題を知り、自分たちが社会にどう貢献できるのかを考える。その経験を将来、ビジネスを考えることにもつなげてほしいという。
こうした学校側の狙いを具体的なプログラムに落とし込んだのがNTT東日本だ。同社 営業戦略推進部 営業戦略推進担当の柳川香奈氏によると、NTT東日本はプログラム全体の企画を担当。山形県長井市・飯豊町では、農家での民泊や有識者へのインタビュー、デジタルを活用したまちづくりについて学ぶ機会などを設けた。柳川氏は、「ドルトンさんから探究旅行に関するテーマをいただき、その中でわれわれができることを考え、東京では味わえない内容を意識しながら、プログラムを作成しました」と振り返る。
NTT東日本が探究旅行に取り組む理由
及川寿幸先生は今回のプログラムについて、飯豊町で人口減少や農業、食について学んだ後、長井市で自分たちの暮らしと比較しながら社会への貢献を考える流れを評価。地元の中学生との交流についても、生徒にとって大きな刺激になったとし、次回は地域住民と交流する時間をさらに増やしたいと話した。
NTT東日本側にも改善点は見えた。柳川氏は、生徒が事業者や有識者から得た情報を、生徒同士で共有する時間をもっと設けるべきだったと振り返る。他の生徒の視点を取り入れる機会を増やすことで、探究や発表の内容をさらに深められると考えている。
NTT東日本は今後、今回の取り組みを他の学校や地域にも広げていく考えだ。同社は探究旅行だけでなく、ワークショップやオンライン授業、教員向け研修などを通じて探究学習を支援している。柳川氏は、「NTT東日本は通信の会社ですが、通信やネットワークを超えて、地域社会の共創をパーパスに掲げている」と説明する。その上で、今回の取り組みを通じて、教育分野でも地域と学校をつなぐ役割を担えることを、多くの学校や事業者に知ってもらいたいと話した。