営業部社員で外回りが多いという相談者が、夏の暑さ対策として毎日飲むスポーツ飲料やハンディファン、冷感シートなどの費用がかさんでいるため、「暑さ手当」を会社に作ってほしいと考えている。これに対し、社会保険労務士の佐藤敦紀氏が回答している。
手当の新設は会社の判断
手当を新設するかどうかは、会社の判断に委ねられている。手当という形にこだわらず、暑さ対策だけ備品として用意してもらう形で相談する方が、実現に近づくという。
手当の支給は、労働基準法が定めている範囲の外にある。そのため、「暑さ手当を設けなければならない」という義務は、会社にはない。
逆に言えば、手当を設けること自体は会社の判断で自由にできる。社員のモチベーションにつながりますし、求人の際にアピールできれば採用効果も期待できるため、実際に設けている会社もある。
廃止の難しさと不公平感
一方で、会社が新設に慎重になる理由がある。一度作った手当を廃止することは「労働条件の不利益変更」に該当するからだ。例えば、今年は猛暑でも、来年の夏はそれほど暑くないかもしれない。それでも「今年は必要ない」と会社の判断だけで取りやめることは、まず難しい。
もう一つの壁は、社員間の不公平感だ。外回りの社員だけに手当を支給すれば、他の職種から「なぜ私たちにはないんだ」と声が上がるかもしれない。全国に拠点がある会社なら、地域差の問題も出てくる。規模の大きい会社ほど、こうした調整に時間がかかる。
オーナー企業のような、規模が小さい会社であれば、社長の一声で決まることもあり、意思決定は早いだろう。給与水準を大きく引き上げることは難しくても、こうした手当で社員に報いるという選択をする会社もある。逆に言えば、世間の水準を上回る給与を支給している会社では、そもそも手当を設ける必要性が薄いともいえる。
具体的な相談が鍵
暑さ対策を会社に求めること自体は、決しておかしなことではない。ただ、「手当」という形にこだわると、会社は廃止の難しさや社員間の公平性まで考えることになり、実現のハードルは上がる。「何を負担してほしいのか」を具体的に伝え、備品の支給という選択肢も含めて相談する方が、話は進みやすいだろう。



