大成建設は昨年7月、転居を伴う転勤時に最大100万円を支給する「転勤手当」を新設した。異動先への距離や家族帯同の有無に応じて5万~100万円を支給しており、東京―大阪間を家族と一緒に転居すれば100万円となる。
手当拡充の背景にある経営層の思い
転勤手当の導入とあわせて、単身赴任者に支給する「別居手当」も月3万円から5万円に増額し、「帰宅旅費」も月2回分から3回分に増やした。金額の上限10万円も撤廃した。
従来も引っ越し代や赴任手当は支給していたが、子どもの転校など実費に換算できない「目に見えない負担」を支援したいとの考えから、手当の新設や拡充に踏み切った。制度の見直しは人的資本投資の一環として人事部で検討していたが、ここまで手厚い支援となった背景には経営層の強い思いがある。
大成建設では役員と社員の意見交換会を各地で行っており、転勤はよく話題になるテーマだ。ある経営層が山間部の土木作業所で働く社員の生活に思いを寄せたことがきっかけで、「やはり麓に家族はいるべきだ」「社員にはできるだけ家族と過ごしてほしい」との考えが示された。
稟議書を5、6回書き直すほどの議論
人事部としては当初、コストも含めて慎重に考えながら手当の案を提示していたが、経営層の思いが強く、より手厚い制度にすべきとの提案があった。担当は稟議書を5、6回ほど書き直した。別居手当についても「毎週社員が帰宅できる額の旅費を支給すべきではないか」という意見もあった。
建設会社は現場があって、そこまで仕事に行くことが基本の会社だ。全国の支店だけでなく、建物やダム、トンネルなど幅広い現場へ行くこともあり、年数も現場によって異なる。約9000人いる社員に異動の可能性があり、毎月誰かが異動している。転勤は事業を進める上で不可欠と考えている。
転勤免除制度も新設
一方で、今回の手当と同時に「転勤免除制度」も作った。家庭の事情など転勤できない理由がある社員は、通算5年まで一時的に転居を免除される。今後は長期間の転勤に配慮する取り組みも必要になると考えている。
社長も「『人財』が競争力の源泉」と話しており、どの会社にも「人件費はコスト」というイメージがあったが、今回の転勤手当は「いかに人に投資をしていくか」に考え方を変える先例となった。



