中部電力が浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の再稼働に向けた原子力規制委員会への申請をいったん取り下げる方向となったのは、次々に判明する不祥事を前に、組織運営の立て直しが必要と判断したためとみられる。林欣吾社長は14日に記者会見を開き、こうした方針を表明する見通しだ。
経営責任の判断は調査委報告踏まえ
今月7日、名古屋市で開かれた中部経済連合会長の記者会見で、中電会長を兼務する勝野哲会長は、相次ぐ不祥事の責任について問われ、「経営責任は、調査委員会の報告に基づきながら、総合的に判断していく」と答えた。この日の記者会見は、政府の税制改正に対する提言などを発表し、中経連として存在感を示す機会だった。だが、記者会見の後半に中電の不祥事に関する質問が相次ぎ、勝野氏は頭を下げ「心より深くおわびを申し上げる」と謝罪の言葉を繰り返した。
データ不正問題に関する調査委員会の報告書提出を受け、勝野氏は辞任する意向を周辺に伝えた。中経連幹部は7日の記者会見について、「観光振興や経済政策への提言など、経済団体として力を入れている活動があるなか、自社の問題に質問が集中したのは、本人もじくじたる思いがあるのではないか」と振り返る。
1年足らずで相次ぐ不祥事発覚
勝野氏がおわびを重ねるほど、中電の不祥事はこの1年足らずの間に相次いで発覚した。浜岡原発では、原子力部門の内部統制を巡る問題が続いている。当初は昨年11月だった。浜岡原発の安全対策工事で、原子力部門が調達部門を通さずに仕様変更を業者に依頼し、正式な契約変更や精算手続きを行っていなかったことが明らかになった。担当役員2人は取締役会に報告しておらず、引責辞任した。
その次に明らかになったのが、浜岡原発の再稼働審査で、耐震設計に関わるデータを意図的に選んでいた問題だ。今回、外部の弁護士による調査委員会が報告書をまとめたことで、中電が「悲願」としていた再稼働をいったん白紙にすることになりそうだ。さらに中電は8月27日、浜岡原発1、2号機の廃炉作業を巡り、資金を管理する「使用済燃料再処理・廃炉推進機構」(青森市)に提出した工事報告書を書き換え、実績と異なる数値を報告していたと発表した。書き換えた手続きで受け取った資金は8億円に上った。原発を巡る不正と別に、9月10日には電気料金を約12億円、過大徴収していたことも発表した。
組織全体で是正できる仕組みが問われる
データ不正や廃炉作業を巡る報告書の書き換えなどは、それぞれ経緯や性質が異なる。問題を早期に把握し、組織内で共有して是正する仕組みが十分に機能したのかどうかという問題は共通する。料金問題では、誤りを把握した後も2年以上にわたって修正されなかった。安全性向上対策工事でも、未精算や取締役会に報告しない状態が長期間続いた。問題が起きた際に組織として止める仕組みの弱さが、原子力部門以外でも浮かび上がった形だ。
林氏はこれまで、原子力部門の「解体的再構築」が必要だとの認識を示している。信頼回復には、個別の再発防止策を積み重ねるだけでなく、問題が発生したときに適切に情報を共有し、組織として是正できる仕組みを組織全体で構築できるかが問われる。



