塚本晋也監督最新作、戦場のPTSD描く「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」公開中
塚本晋也監督最新作、戦場のPTSD描く「ネルソンさん…」公開中

塚本晋也監督の新作「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」が、キノシネマ新宿などで公開中だ。ベトナム戦争に従軍したアフリカ系アメリカ人アレン・ネルソン(1947~2009年)が自身の戦場での体験をつづった同名の著作が原作。戦場の恐怖が人間をむしばむ心的外傷後ストレス障害(PTSD)を正面から捉えている。

戦場の惨禍を一人の兵士の視点で

貧困の中で育ったネルソンは、18歳で海兵隊に入隊し、ベトナムの戦線に送られる。兵士となることは、相手を殺すこと。苛烈な訓練を受けて、戦場に立ったネルソンは地獄を見ることになる。戦場の描写は容赦がなく、文字通り人が虫けらのように死ぬ。銃弾を浴びた体は四散し、遺体は腐敗する。そのにおいまで漂うかのようだ。

「野火」「斬、」「ほかげ」と続く近作で、戦争の惨禍や戦うことのむなしさを一兵士や一市民の視点で描いてきた塚本監督が、今は暴力の究極形である戦争を忌むべきものとして提示する。伝説的名作「鉄男」を始めとする諸作品で暴力や衝動を描いてきた監督ならではの視点だ。

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実在の兵士の問いと向き合う

タイトルに掲げられた言葉は、ネルソンが小学生たちに自分の体験を語った後、その中の少女から投げかけられた質問だ。戦場で敵から襲われる可能性があるのに、殺さないということはあり得ない。この映画は、政治指導者や司令官ではない、現場の一人の兵士による戦争加害に焦点を当てたという意味でも希有な作品だろう。

戦場に立つ若きネルソンを映画初出演のマーク・マーフィー、除隊後もPTSDに苦しみ続ける中年のネルソンをロドニー・ヒックスが演じる。こちらも実在の人物をモデルにした医師ダニエルズ(ジェフリー・ラッシュ)は、カウンセリングで「君はなぜ人を殺した?」と問い続ける。それに対して「命令されたから」などとはねつけていたネルソンが、長い年月をかけてある結論にたどり着く。

4か国ロケで描く戦争の本質

低予算の独立系作品を多く撮ってきた塚本監督としては、近年異例となるベトナムや米国などでの4か国ロケが敢行された。だからといって、作品の底で熱を発する核の本質は変わらない。戦争がやむことのないこの世界に対する切迫した危機感だ。上映時間は1時間56分。

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