米オープンAIは8日、自社のAI(人工知能)を使い、流体の運動を表す「ナビエ・ストークス方程式」についての超難問を証明したと発表した。近年、注目を浴びるAIによる数学研究が、人間が長年解けなかった問題の答えを導くまでに到達した可能性がある。ただ、データの不正使用を指摘する声が上がり、物議をかもしている。
流体力学の基本方程式に潜む未解決問題
ナビエ・ストークス方程式は、水や空気といった流体の動きを説明する、流体力学の基本方程式。天気予報にも応用されている。
3次元の動きを、この方程式でなんでも表せるのか、それとも表せなくなる場合があるのかは、数学的に解明されていない。「リーマン予想」などと並び、クレイ数学研究所が解決に100万ドルの賞金をかけた七つの「ミレニアム問題」の一つだ。
非公開モデルで88時間、約1万のAIエージェントを並行稼働
オープンAIによると、チームは最新の公開モデル「GPT―6 アストラ」より高性能な非公開モデルを使い、約1万のAIエージェントを並行して動かしながら88時間かけて、特定の条件下では表せなくなるという結論を導いたという。同社は、専門家による査読前だが、その結論をまとめた160ページ超にのぼる論文と、数学の定理の正しさを判定するソフト「Lean(リーン)」を使った結果も公表した。
ただ、この解法は第三者の検証が完了したわけではなく、本当に正しいかどうかはまだ分かっていない。
「ライデン宣言」とデータ不正使用の疑惑
近年ではAI企業が自社のモデルの性能を示す目的で数学の難問に挑戦し、一方的に「解けた」と発表する例が相次ぐ。欧米の数学者や研究者のグループは6月、数学の証明などにAIを安易に利用することに警鐘を鳴らす「ライデン宣言」を発表した。
一方、今回のオープンAIの発表をめぐっては、別の批判も起きている。ほかのチームがオープンAIのAIモデルに入力したデータの一部を使った可能性が指摘されているからだ。
「私の知る限り、ほかにこの問題に取り組んでいた人はほとんどいなかった。これは、モデルに問題文を与えただけで数日でたどり着けるようなものではない」
ニューヨーク大学の数学教授トリスタン・バックマスター氏は8日、オープンAIの発表に先立ってSNSにこうした声明を投稿した。バックマスター氏は、AI企業アンソロピックに勤務する数学者とともに、AIを使って数学の難問に挑戦していた。声明によると、バックマスター氏はデータ不正使用の可能性を指摘している。



