BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会が8月6日、東京・台場のフジテレビ本社で開催した2026年度「中高生モニター会議」で、フジテレビ系バラエティ番組『芸能人が本気で考えた! ドッキリGP』の制作者との意見交換会が行われた。
登場したのは、番組の総合演出を務める中川将史氏。自ら「番組で芸人さんたちから『またお前か』と言われている“いつものD”が僕です」と自己紹介し、一つのドッキリが生まれてから放送されるまでの舞台裏、安全対策、コンプライアンス、視聴者からの声との向き合い方まで中高生に語った。
日常の「一瞬焦る」「びっくりする」がドッキリに
「ドッキリのアイデアは、会議室だけで生まれるわけではありません」と話す中川氏。例えばジップラインを使った企画は、自宅近くの公園で子どもたちが遊んでいる姿を見て、途中で切れたら焦るだろうと思ったことが発端だったという。
もちろん実際に危険なことをするわけではない。中川氏は、日常の中で感じる「一瞬焦る」「びっくりする」という感覚がドッキリの出発点になることがあると説明。そこから協力してくれる工場や技術者を探し、装置を制作して何度もテストを行い、企画を形にしていく。
特に重視するのが安全性だ。湖に落ちる企画であれば、ダイバーが水深や水中に危険物がないかを確認し、スタントマンやスタッフによる検証も実施。笑いを成立させる以前に安全を担保することを徹底しているという。
また、ドッキリは基本的に一発勝負だけに、本番前には何度もリハーサルを重ねる。仕掛けられた出演者についても、ただ驚かされて終わるのではなく、自分自身もそこで笑いを取れたと思って帰ってもらえるようにすることを意識し、ネタばらし後のインタビューにも時間をかけている。
撮影が終わってからも、作業は続く。複数のカメラで撮影した膨大な映像から表情を選び、テロップ、音楽、効果音、ナレーションなどを加えて一本のVTRに仕上げていく。
8月8日に放送された『ドッキリも地球を救う4時間テレビSP』では、中川氏自身も「100時間ぐらい」パソコンに向かっていたのではないかというほど編集に没頭。目が悪くなったと感じるほどだったというが、それでも「楽しい仕事なので」と制作に向き合う思いを語った。
コンプラ度外視なら? 「テレビとしてやりたいとは思わない」
そんな中川氏に、高校3年生の男子モニターが尋ねたのが、「コンプライアンスを度外視して、予算も時間も自由に使えるとしたら、どんな企画をやってみたいですか?」という質問だった。
これに中川氏は、コンプライアンスを無視してよいと言われたとしても、「テレビとしてやりたいとは思わない」と回答した。
中川氏が考えるコンプライアンスは、面白さを削るためだけに存在するものではない。「番組をつまらなくするものではなく」、その時代に合った笑いを考えるための「参考書やガイドのようなもの」だという。
ドッキリで落とされた出演者がただ痛がっていれば、視聴者も安心して笑うことはできない。しかし、驚いた後に本人からツッコミが返ってくれば、そこに笑える空気が生まれる。その「バランスが大事」だと説明した。
一方で、予算を自由に使えるという条件には、「東京全体」を舞台にしたり、「世界や宇宙」を使ったりするような企画を考えてみたいと答えた。
「今週の放送、面白いから見て」と言えるかどうか
BPO関係者からは、「『ドッキリGP』には、視聴者からさまざまな意見が寄せられます。制作現場では、そうした声をどのように受け止めていますか?」という質問も出た。
中川氏は「若い皆さんの前でうそはつきたくない」とした上で、意見が届いた瞬間に「ああ、そうか」と思うことはあると率直に回答。それでも、「『うるさいな』と思ったことは一度もありません」と語った。
そうした声は世の中の反応の一つ。「自分たちが少しずれていたのかもしれない」と考えたり、次はどうすれば、より多くの人に安心して笑ってもらえるのかを考えたりするきっかけにしているという。
さらに、番組作りにおける一つの基準として挙げたのが、自分の家族や大切な友人、その子どもたちに「今週の放送、面白いから見て」と言えるかどうかだ。
『ドッキリGP』については「少しやんちゃな番組かもしれません」としながらも、視聴者から寄せられる声には「真摯に受け止めています」と向き合う姿勢を示した。
中高生「一つ一つがこんなに考えられて作られているのか」
こうした話を聞いた中高生からも、さまざまな反響が寄せられた。
中学2年生の女子モニターは、「みんなが笑えるのが大切」という考えや、コンプライアンスをガイドのような存在として捉える姿勢が特に印象に残ったとコメント。
また、普段から番組を見ているという中学1年生の女子モニターは、「一つ一つがこんなに考えられて作られているのか」と驚いたという。将来、面白い番組の企画を考える仕事をしたいと思うきっかけになったのも『ドッキリGP』だったといい、今回、制作者の話を直接聞けた喜びを明かした。



