ノーベル化学賞の受賞発表から一夜明けた8日、東京理科大名誉教授の硤合憲三さん(76)が同大神楽坂キャンパス(東京都新宿区)を訪れ、学生や教職員ら数百人から祝福を受けた。
「硤合反応」の論文掲載時の思い出
ノーベル賞の授賞理由になった「硤合反応」の論文が科学誌「ネイチャー」に掲載されたのは、硤合さんが同大教授だった1995年。早稲田大の柴田高範教授(60)はその頃、研究室で唯一の助手だった。
科学者なら誰もがあこがれる一流科学誌への掲載決定。所属する学生と大喜びした柴田さんに対し、硤合さんは冷静だった。お祝いの席で「これからが始まり。ここにとどまるのではなく前に進もう」と語った姿を今も鮮明に覚えている。
後進に受け継がれる研究精神
硤合さんの研究人生は、一貫して東京理科大で繰り広げられてきた。「粘り強く実験に取り組む」という硤合さんの精神は、研究の最前線に立つ後進にも受け継がれている。
硤合さんが実験を始めたのは80年代といい、当初は思うような結果が得られなかった。柴田さんは「『絶対に自分の目指す反応はある』と信じ、論文が掲載された後もさらに完成形を目指していた」と振り返る。この諦めない精神は、今も学生に伝え続けている。
恩師の変わらぬ姿
硤合さんが東京大大学院博士課程2年だった頃に大学の卒業論文で直接指導を受けた東京科学大の鈴木啓介特命教授(72)は、フラスコへの試薬の入れ方など実験の様々な注意点を一から丁寧に教えてもらった。
受賞が決まった7日に開かれた記者会見で硤合さんの姿を見て「冷静に語るところが、今も昔も変わらない」と実感した。研究室対抗のサッカー大会にも一緒に出場し、「『研究も勝たなければならないけれど、スポーツでも負けるな』と励まされた」とかつてを懐かしんだ。