佐藤春夫記念館、移転・改装完了し7日オープン 外壁や門を厳密再現
佐藤春夫記念館、移転・改装完了し7日オープン 外壁や門を厳密再現

新宮市出身の作家・佐藤春夫(1892~1964年)を顕彰する新宮市立佐藤春夫記念館の移転・改装工事が完了し、7日にオープンする。春夫が暮らした旧邸宅に関する映像や写真を基に、外壁の色やアーチ形の門など、本人がこだわった意匠をより厳密に再現した。

多才な作家の足跡

春夫は県立新宮中学校を卒業後に上京。谷崎潤一郎の推薦で1918年に文壇デビューした。小説「田園の憂鬱」や「秋刀魚の歌」などを発表したほか、海外作品の翻訳や絵画制作など幅広い分野で才能を発揮。太宰治など多くの門弟を育て、60年に文化勲章を受章した。

旧記念館は、春夫が72歳で亡くなるまで40年近く暮らした東京都文京区の自宅をモデルにしていた。新宮市が1989年、熊野速玉大社境内に移築して一般公開してきたが、老朽化などで2024年に休館した。

新記念館の特徴

市は移転整備に向け、春夫が少年期に遊んだ思い出の地である同市伊佐田町の民有地を取得。総事業費約3億7000万円をかけて、改装などを進めてきた。

新たな記念館は木造・鉄筋コンクリート造の2階建てで、延べ床面積は計約300平方メートル。遺族の意向を踏まえ、かつての居住部分の間取りは極力変えず、1階に門弟らと交流した応接間を設けた。2階には「八角塔」と呼ばれる春夫が好んだ狭い書斎を復元し、愛用品などを紹介する展示室も備える。玄関ドアの小窓にはこれまで通り、マジックミラーを採用。春夫自身が大工にノミを借りて彫刻を施したとされる装飾柱も設置し、細部に春夫のこだわりが息づいている。

厳密な再現と開館情報

その上で、新記念館では旧邸宅の映像や写真を基に、より厳密な復元を試み、外壁は淡いレンガ調の色に塗り替え、外門の独特な台形状のアーチを再現。八角塔には壁に埋め込まれた棚を新設した。

楠本秀一館長(77)は「移転先は小説『わんぱく時代』の舞台で、反骨精神を育んだ春夫の原点でもある場所。そこで再びオープンできるのは感慨深い」と説明。「春夫のこだわりが随所に見られ、多才で多くの人に親しまれた作家だったことを知ってほしい。作品をまだ読んだことがない人にも昭和の懐かしい雰囲気を楽しんでもらえると思う」と話している。

12月27日までは期間限定で、春夫が東京に自宅を新築した当時の貴重な映像を新設の大型モニターで公開する。開館時間は午前9時~午後5時。休館は月曜日と祝日の翌日、12月28日~1月3日。入館料は330円(小中学生160円)。駐車場は5台。問い合わせは市立佐藤春夫記念館(0735・21・1755)。