ノーベル賞「光遺伝学」とは?脳活動を「読む」から「書き込む」学問へ
ノーベル賞「光遺伝学」とは?脳活動を「読む」から「書き込む」学問へ

今年のノーベル生理学・医学賞は、神経科学の分野で「光遺伝学」という研究に贈られることが決まった。受賞するのは、米スタンフォード大学のカール・ダイセロス氏ら、アメリカとドイツの3人の研究者だ。

光遺伝学とは何か

光遺伝学は、微生物が持つ光を感じるたんぱく質を動物の神経細胞に入れ、神経の活動を光でコントロールする技術。これにより、動物の記憶や社会行動、痛みなど、脳のさまざまな機能が脳内のどの領域で担われているのかを解明できるようになった。

受賞理由を発表したスウェーデンのカロリンスカ研究所の選考委員は、「脳活動を『読む』学問から『書き込む』学問へ、神経科学を変革した」と評価している。

評価された2つのポイント

評価された点は大きく二つある。一つは、クラミドモナスという単細胞の藻類から、光を受け取るたんぱく質「チャネルロドプシン」を見つけたことだ。光に反応するたんぱく質はほかにもあるが、動物の神経に入れても神経の活動を素早く観察することが難しかった。

もう一つは、そのチャネルロドプシンをマウスなどの哺乳類の神経に入れて、細い光ファイバーを使い、千分の1秒単位でオン・オフを制御できるようにしたこと。この技術が「光遺伝学」と呼ばれ、生きた動物の神経の活動を観察できるようになった。

今後の応用と日本との関係

この技術は、脳機能の解明だけでなく、失われた視覚の再生や、失明患者への光センサーを用いた臨床試験など、医療分野への応用も進んでいる。日本では慶応大学などが臨床試験を開始しており、人工網膜によって視力改善が期待される事例も報告されている。