海水浴場で「夜間シフト」進む、酷暑で夕方以降に人出集中…安全対策が課題に
海水浴場で「夜間シフト」進む、酷暑で夕方以降に人出集中

夏の海水浴場で、日中を避けて夕方以降に海を訪れる人が増えている。全国各地の人流データから「夜間シフト」の傾向が鮮明になり、酷暑が続く近年の気象が影響しているとみられる。安全や治安の面での対策が求められそうだ。

日没後の海水浴場に人波

先月30日、神奈川県逗子市の逗子海水浴場。日没後の薄暗い砂浜は、水着やTシャツを着た大勢の家族連れやカップルらでにぎわっていた。子ども3人を連れて訪れた同県横須賀市の男性(31)は「子どもの熱中症が怖いので、涼しくなる夕方から遊びに来た」と話した。

同海水浴場では夕方頃から訪れる客が目立つようになり、2年前から人出が多い休日などに限定して海の家の営業時間を午後8時から1時間延長した。逗子市によると、過去2年は延長した時間帯に年間約5000人が訪れ、担当者は「今夏はさらに人出が増えた印象だ。暑い時間を避け、ゆっくり海を楽しみたいというニーズを実感している」と話す。

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全国で広がる夜の集客

気象庁によると、夏の平均気温は統計開始以来、2023~25年が1~3位の暑さとなった。今夏は歴代5番目の暑さで、最高気温が40度以上の「酷暑日」を記録した地点は延べ36に上り、比較可能な10年以降で最多だった。

厳しい暑さの中、海水浴場が夜の集客を狙う動きは広がる。鳥取県米子市の皆生温泉海遊ビーチでは、23年から砂浜での宝探しやスーパーボールすくいなどの縁日といった夜のイベントを実施。夜間の客は年々増え、今夏は23年から4倍超の約1万3200人になった。和歌山県白浜町の白良浜でも、夜にバーとして利用できる砂浜のカフェが25年にオープンした。

人流データが示す「夜間シフト」

帝国データバンクとドコモ・インサイトマーケティングが神奈川、兵庫、宮崎など20道府県の利用客の多い海水浴場63か所で25年と26年の「海の日」の人流を比較したところ、午後5~8時の時間帯では1時間ごとですべて増加。午後7時は14%増、午後8時は22%増だった。一方、午前8時~午後4時は減少した。

読売新聞もAI分析会社「ロケーションエーアイ」(東京)の協力を得て、国内最大規模の片瀬西浜・鵠沼海水浴場(神奈川県藤沢市)の位置情報を基に、コロナ禍前の19年と今年の8月の人出を1時間ごとに分析。午前8時~午後5時はいずれも19年の方が多く、午後6~9時は今年の方が多かった。

安全面の課題と専門家の指摘

夜の海はリスクが高まる。日本ライフセービング協会(東京)によると、ライフセーバーの活動は多くの海水浴場で夕方に終了する。夜間は光がほとんどなく、波の高さや水深、陸との距離がわかりにくいため、利用者の判断で危険を認識、回避しなければならない。また、夜間の利用時間が延びると、飲酒量の増加による客同士のトラブルや近隣への騒音被害につながりかねない懸念もある。

海水浴の歴史に詳しい畔柳昭雄・日大名誉教授(親水工学)は「食事目的で海に行くなど楽しみ方の多様化と、暑い時間は避けたいとの心理が合わさり、『夜の海』を楽しむ人が増えている」と話す。その上で「トラブル防止のためには、運営する側と利用者の双方が規範意識を持つことが欠かせない」と指摘している。

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一方、海水浴の客足は長年低迷している。日本生産性本部の「レジャー白書」によると、海水浴人口のピークは1985年の3790万人だったが、2024年はピーク時の1割余りにあたる440万人にとどまる。日本観光振興協会によると、全国の海水浴場は1985年の1353か所から、2024年には969か所となり、約40年で3割近くが廃止された。