千歳線新駅は「Fビレッジ駅」に正式決定、2028年3月開業目指す
千歳線新駅「Fビレッジ駅」に決定、2028年3月開業へ

北広島市とJR北海道は、千歳線の上野幌~北広島間に設置する新駅の名称を「Fビレッジ駅」に決定した。北広島市内に整備された「北海道ボールパーク Fビレッジ」の最寄り駅となる。プロ野球ファンらにとっては、北海道日本ハムファイターズの本拠地スタジアム「エスコンフィールド HOKKAIDO」の最寄り駅と言った方がわかりやすいかもしれない。

工事は順調、開業は2028年3月に前倒しへ

工事は順調で、開業日は当初予定の2028年夏頃から繰り上げ、2028年3月のダイヤ改正日を目標にしている。2016年に北広島市が新駅を構想した際、JR北海道は千歳線の空港輸送を重視していたこともあり、積極的ではなかった。その後、北広島市とJR北海道が前向きな検討を開始し、位置の移動、配線計画の変更など協議を重ね、着工に至った。

Fビレッジ駅という駅名から、Jヴィレッジ駅(福島県)を連想する向きも多いだろう。Fビレッジは野球、Jヴィレッジはサッカーの関連施設で、施設を間違える人はいないと思うが、乗換検索アプリで駅名を打ち間違えるかもしれないから気を付けたい。

構想は2016年から、JR北海道は当初慎重だった

Fビレッジ駅の構想は2016年に始まっており、Jヴィレッジ駅の設置調査検討開始より1年早い。札幌ドームを本拠地としていた北海道日本ハムファイターズが、新たな本拠地として自社施設を建設し、移転する方針を固めた。いくつかの候補地の中から、北広島市の「きたひろしま総合運動公園」を有力候補として絞り込んだ。北広島市は誘致活動にあたり、ボールパーク構想を掲げた。スタジアムだけでなく、周囲にショッピングモール、ホテル、キャンプ場、広大な芝生広場などを設置する。野球の試合がなくても楽しめるレジャー施設であり、その構想のひとつとして、付近を通る千歳線の新駅設置があった。

当時、JR北海道が積極的でなかった理由は、2018年に北広島市の案が採用され、ボールパーク建設計画が動き出した際のJR北海道の姿勢に見て取れる。当時のJR北海道代表取締役社長は定例記者会見で、「観客の輸送手段の確保に向け全面的に協力していく」としつつも、「新駅をつくれば問題が解決するわけではない」「年間試合数が50~60という球場輸送に、どれだけのコストをかけられるか」と疑問を呈していた。

空港輸送との両立、線路配置の変遷

北広島市とファイターズのボールパーク構想は、「試合がない日も集客できる施設」をめざしていた。「年間試合数が50~60」の採算問題はファイターズにとっても同じ課題で、約600億円と推定される建設費を償却するために「試合がない日も集客する」ことが重要だった。だから通年で集客できるレジャー施設とショッピングモールを併設した。

JR北海道にとっても、「ボールパーク新駅」は経営戦略上のチャンスになりえた。スタジアムやショッピングモールの最寄り駅となれば、駅周辺の開発と組み合わせた利用者獲得も考えられる。駅に付帯する商業施設やホテルを建設すれば、新千歳空港からの利用者も見込めるし、札幌市内のホテル不足にも対応できるかもしれない。北広島市に「自費で駅をつくるから、周辺の土地を好条件で使わせてほしい」と持ちかける方法もあっただろう。

しかし、JR北海道は慎重だった。2011年から度重なる事故と不祥事が発覚しており、2014年に国土交通大臣から「輸送の安全に関する事業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」が出され、事業の選択と集中を進めていた。経営資源はおもに北海道新幹線と安全施策に振り向けられ、新規事業どころではなかった。

選択した事業のひとつに札幌~新千歳空港間の増発が挙げられる。JR北海道にとって数少ない黒字区間であり、空港輸送の強化は北海道などから要望も強い。具体的には、当時1時間あたり4本だった快速「エアポート」を1時間あたり5本に増発したい。しかし、ここで「ボールパーク新駅」ができてしまうと、普通列車の速度が低下し、「エアポート」の増発も難しくなる。JR北海道は新千歳空港改良計画も掲げていたが、千歳線の運行本数が限られてしまうと、改良の効果も限定される。

請願駅として再起動、工事費と工期の課題を克服

一方、北広島市は「請願駅」としてJR北海道に新駅設置を打診していた。設置を請願した北広島市が費用も負担する。そこでJR北海道は、空港輸送に支障なく新駅を設置する方法を検討した。北広島市は本線上に駅を希望したが、JR北海道としては本線への影響を抑えたい。そこで本線から線路を分岐する提案を行った。ただし、平面で分岐すると本線をまたぐため、ダイヤに制約が生まれる。現行ダイヤを維持し、さらに増発するために、分岐線と本線を立体交差にしたい。それでは建設コストが上がってしまう。

JR北海道による次の提案は待避線付き1面4線だった。上下線の間に島式ホームを設置し、その外側に「エアポート」や特急列車が追い越すための線路を設置する。さらに北広島駅側に引上げ線を設置し、札幌駅から「ボールパーク新駅」までの区間列車を増発可能とした。これはつまり、分岐案の駅と折返しの役割を本線の上下線の間に挟んでしまおうというアイデアだった。この線路配置であれば、本線の列車に支障なく折返し可能となる。

2020年、この案を前提に、北広島市はJR北海道に対して正式に新駅設置を請願した。翌年からJR北海道は着工に向けて測量と線路配置、工事計画の検討を開始した。ところが、資材価格や働き方改革による労務費などコストが上昇。2019年に概算で80億~90億円だった概算工事費は、2023年の再検討で115億~125億円に膨らんだ。

この結果に対して、北広島市は工事費圧縮と工期の短縮をJR北海道に要請した。JR北海道が新駅計画を再検討した結果、上下線の本線を通過線とし、その両側に待避線を設置して、待避線側に単式ホームを設置する「相対式ホーム2面4線」という現在の案に落ち着いた。この案に引上げ線機能はないが、北広島駅構内に新たな分岐器と渡り線を設置することで、札幌方面への折返し運転を可能にする。つまり、試合開催日の区間列車は、札幌駅から「ボールパーク新駅」までではなく、1駅先の北広島駅まで進み、札幌~北広島間の運転となる。

北広島駅は島式ホーム2面4線。それまで3番線のみ折返しに対応していたが、さらに分岐器を増設し、2番線からも折返し可能にした。もともと快速列車と普通列車が連絡できる構造のため、新千歳空港駅から快速「エアポート」に乗り、北広島駅で普通列車に乗り換えて「ボールパーク新駅」に行ける。逆もまた然り。必ずしも同一ホーム乗換えとはならないものの、新千歳空港を介して、全国各地から「エスコンフィールド HOKKAIDO」へスムーズに到着できる。北広島市にとっても、区間列車が北広島市の中心部に到達するため、便利になる。

工事費は85億~90億円に、開業で「三方良し」へ

この計画変更で、工事費は当初の概算に近い85億~90億円となった。加えて、島式ホームを設置するための本線の間隔を広げる工事が不要になるなどで、約7年だった工期が約5年(設計・行政手続き約1年、工事期間約4年)に短縮された。これは大きな副産物だった。

2023年に開業した「エスコンフィールド HOKKAIDO」は、商業施設と融合した画期的なスタジアムとして話題となった。しかし、北広島市が案じていたように、試合開始1時間前から駐車場に入る車で混雑し、試合終了後も駐車場からの出庫に30分以上かかり、周辺道路も渋滞しているという。「エスコンフィールド HOKKAIDO」の公式サイトによると、自家用車による札幌市街からの所要時間は50分となっている。現在の鉄道による札幌~北広島間の所要時間は17分前後のため、Fビレッジ駅が開業した場合は15分前後になるのではないかと予想する。

「ボールパーク新駅」がFビレッジ駅として開業すると、北広島市にとって「きたひろしま総合運動公園」全体の集客が向上する。JR北海道にとっても、自家用車から転移する新たな観客の獲得が見込まれる。野球観戦者にとっても、ストレスのないアクセスルートを選べる。三方良しである。

欲を言えば、JR北海道はきちんと増発して、観客の混雑を和らげてほしい。観客が「列車で行って良かった」と思えるように。そして駅周辺に自社で集客施設を設置し、混雑が落ち着くまで買い物や飲食で過ごせる場所があってほしい。利用者にとって便利で、楽しく過ごせる駅になってほしい。JR北海道はこのビジネスチャンスをどのように生かすだろうか。