2030年度から、小売電気事業者に対して「量的な供給力(kWh)」の確保を求める新制度の導入が予定されている。その詳細設計を進める「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ」は、小売電気事業者を対象に実施したアンケート調査の結果を公表した。それによると、約7割の事業者がリスクヘッジを実施していない実態が明らかになった。
スポット市場の拡大と混乱
電力の小売全面自由化以降、短期的な電力取引を行うスポット市場の取引量は需要の3割程度に増加した。一方で、その市場価格が高騰した際には、小売電気事業者の撤退による小売契約の解除や、多くの需要家に最終保障供給への移行を強いるなどの混乱も生じた。
新制度の概要とアンケート調査
このため、ワーキンググループでは「需要家に対する安定・継続した電力(kWh)の供給ができる事業環境の実現」を目指し、2030年度から小売電気事業者に「量的な供給力(kWh)」の確保を求めることとした。具体的には、実需給の3年度前(N-3年度)に各小売電気事業者における過年度の販売実績の5割、実需給の1年度前(N-1年度)に過年度の販売実績の7割の確保を求める(小規模事業者はそれぞれ2.5割、5割)こととしている。
資源エネルギー庁は、小売電気事業者のkWh確保の実態などを把握することを目的として、本年6月~7月に、すべての小売電気事業者(813社)を対象にアンケート調査を行った。回答数は425社であるが、実際に小売供給を行っている事業者の実態を分析する観点から、販売実績がゼロである事業者の回答は集計対象外として、有効回答数は356社であった。
事前確保の状況と規模別の差異
kWhの事前確保について、実需給年度の3年度前の時点で当該年度の予定販売電力量の30%以上を事前確保している事業者は約2割である一方、約6割の事業者は全く事前確保を行っていない。また、実需給年度の1年度前の時点では、当該年度の予定販売電力量の50%以上を事前確保している事業者は全体の4割以上に増えるが、全く事前確保を行っていない事業者も4割以上存在する。
これを小売電気事業者の規模別(5万kWh以上/それ未満の小規模)に分けて集計した。年間販売電力量5万kWh以上の小売電気事業者では、3年度前からその予定販売電力量の30%以上を事前確保している事業者は3割以上であるが、0%の事業者も4割以上存在する。小規模事業者では、3年度前に予定販売電力量の30%以上を事前確保している事業者は2割以上、0%の事業者が7割以上である。
また、1年度前時点では、5万kWh以上の事業者では50%以上を事前確保している事業者数は5割を超え、小規模事業者でも4割以上となる。ただし、いずれも事前確保率0%の事業者が存在する。なお、図3の下段(1年度前)は、5万kWh以上/それ未満の小規模でグラフの集計区分が異なることに留意したい。