藤井聡太竜王、6連覇へ意気込み「一手一手に読みを入れる」 服部七段「倒さなければいけない存在」 竜王戦七番勝負開幕
藤井竜王、6連覇へ「一手一手に読み」 服部七段「倒す存在」

6連覇を目指す藤井聡太竜王に、初戴冠を目指す服部慎一郎七段が挑む第39期竜王戦七番勝負が9日、東京都渋谷区のセルリアンタワー能楽堂で開幕する。昨期、5連覇を達成して「永世竜王」の資格を得た藤井竜王にとって、新たな歩みを始めるシリーズとなる。服部七段は初の竜王戦七番勝負登場で、初タイトルが懸かる。

藤井竜王、充実した内容の将棋を目指す

藤井竜王は挑戦者・服部七段の戦いぶりについて「全体的に力強さ、粘り強さが発揮されていた」と評価。本戦準決勝の増田康宏八段戦を「際どい局面が続く激戦でしたが、実戦的な好手を服部七段のほうが多くみせて勝ちきっていました」と振り返った。

今年の棋聖戦五番勝負では服部七段と対戦しており、「初めてのタイトル戦で緊張や慣れないところもありました。ただ、バランスの保ち方は、服部七段ならではの強さがあると思いました」と語る。

七番勝負の展望については「服部七段は居飛車党で幅広い戦型を指されており、序盤から一手一手考えるような将棋も多くなりそうです。一手一手にしっかりと読みを入れて、充実した内容の将棋を目指したい」と述べた。

服部七段、初の2日制戦いに意気込み

服部七段は「すごく楽しみです。1日目を互角で乗り切れるかどうかが一番大事で、差がついていない理想的な展開に持っていくためにどうするかを考えようと思っています」と語る。

藤井竜王の強さについては「弱点はあまり見えません。終盤だけでなく、序中盤も幅広く精通されている。読みがとても丁寧で、対して自分は感覚派。第一感で自然な手を選ぶので、その差があると思います」と分析。藤井竜王の存在については「ずっと追いかける存在でした。将棋のプロになる以上、タイトルを目指すものだと思ってきました。タイトルを取るためには、倒さなければいけない存在だと思っています」と語った。

ファンへのメッセージとして「玉が中段にいく将棋が多いです。竜王戦挑戦者決定三番勝負でも玉が四段目まで泳いでいった将棋がありました。そうした玉さばきや力強い指し回しを見てもらいたいです」と話した。

注目の漫才コンビ「もぐら兄弟」

服部七段は同じ関西本部所属の冨田誠也五段と漫才コンビ「もぐら兄弟」を組み、イベントで披露している。漫才師日本一を決める「M―1グランプリ」に挑戦したこともあり、ファンの間で高い人気を誇る。

2人は2022年に関西本部の若手棋士でつくる「西遊棋」のイベントで初舞台を踏んだ。冨田五段が人前で漫才をするのはこの時が初めてだったが、元竜王・糸谷哲郎九段の特徴やエピソードをネタに、M―1王者・ミルクボーイ風の漫才に仕立てたところ、想像以上の大反響を巻き起こした。冨田五段は「ウケた瞬間、鳥肌が立った。将棋では観客がわっとなることってなかなかない」と振り返る。

その後も漫才の経験を積み、24年にはM―1グランプリに出場したが、あえなく1回戦で敗退。「びっくりするくらいすべった」(冨田五段)、「忘れられない2分間」(服部七段)とほろ苦い思い出となった。冨田五段は「服部君が竜王を取ったら(漫才を)やらないといけないかも」とひそかに構え、「すごく強いのはわかっているので、七番勝負ではその力を存分に出してほしいですね」と相方の健闘を祈っている。

豊島九段が見据える勝敗のカギ

竜王2連覇や、2019年に史上4人目の「竜王・名人」同時戴冠を果たした豊島将之九段は、今期の七番勝負を展望した。

「毎年高勝率を上げ、今年は棋聖戦でタイトルに挑んだ服部七段が竜王戦でも挑戦者になったことに、驚きはありません」と語る。服部七段については「受けがしっかりしていて、不利になってもうまくあやをつける嗅覚が優れています。最近は長い持ち時間でも満遍なく勝っています」と評価。

一方、藤井竜王については「相変わらず高い勝率を維持しています。特に先手番の角換わりで高い勝率を上げている。最近は後手番の時にどう戦うかを考えていて、序盤の指し方の幅を少しずつ広げている印象があります」と分析する。

七番勝負のポイントについて「服部七段は最初の2局のうち先手番は取りたいところです。対藤井竜王戦となると先手番がカギになってくると思います。藤井竜王は後手番でどう戦うかが課題でしょう」と指摘。「服部七段は形勢が揺れ動く中で自分に流れをたぐり寄せる力が強い。対して藤井竜王は有利な局面を丁寧に、ちょっとずつ差を広げて完璧に勝つのがうまい。両者とも無理に主導権を取りにいかず、攻められるのは苦にしないという共通点があります。どちらから動きが出てくるのかに注目しています」と語った。

第1局は10月9、10日にセルリアンタワー能楽堂(東京都渋谷区)で行われ、以降、三嶋大社、仁和寺、霧島創業記念館、増上寺、指宿白水館、常磐ホテルと続く。