100万ドル超の富裕層290万人、SMBC・MUFG・みずほの富裕層ビジネス戦略と課題
富裕層ビジネス、SMBC・MUFG・みずほの戦略と課題

長らく続いた金融緩和による株価や不動産価格の上昇などを背景に、日本においても富裕層は増加している。スイスの大手金融機関UBSの「グローバル・ウェルス・レポート2026」によると、日本の富裕層(100万ドル以上の資産を持つ成人数)は、290万人に達している(2025年)。こうした富裕層をターゲットに、メガバンク各社は、デジタル個人金融やポイント経済圏との連携を進める中で、資産運用を中心とした富裕層ビジネスの拡大にも積極的に取り組んでいる。

しかし、華やかなサービス競争が加速する一方で、メガバンク側と富裕層のリアルなニーズとの間には、思いのほか大きな「温度差」が存在する。

本稿では、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の取り組みを整理し、それぞれの課題について考える。

SMBCグループ:好調「Olive」が狙うデジタル富裕層

2022年6月からSBIグループと資本業務提携を結ぶSMBCグループでは、個人向け金融サービス「Olive」が好調だ。2026年5月には個人向け資産運用助言会社Oliveコンサルティング(東京都港区)を設立し、最上位カード「Olive Infinite」の提供を開始した。

Oliveコンサルティングは、SMBCグループが60%(SMBCグループ10%、SMBC日興証券30%、三井住友銀行20%)、SBIグループが40%(SBIホールディングス10%、SBI証券30%)を出資して設立した。「マネーフォワードME」と連携した「デジタル資産運用サービス」を提供。アプリ上で保有資産を俯瞰できるだけでなく、専門家が設計した資産配分との比較や、資産移転のシミュレーションなどが可能だ。

また「フレキシブルコンサルティング」サービスでは、Oliveに紐づく資産状況やカードランクに応じて、オンライン面談、チャット、電話、対面相談など複数の相談チャネルを提供する。対面相談はOliveコンサルティングに属するSMBC日興証券、三井住友銀行のアドバイザーが務める。さらに、SBIグループ傘下のFOLIOと共同開発したサービス利用者限定のファンドラップ「Oliveラップ」の提供も開始している。

Olive Infinite:最上位カードの特典とターゲット

Oliveの最上位ランク「Olive Infinite」では、決済機能にVisaの最高ランク「Visa Infinite」(年会費9.9万円)を搭載。最大11万円相当の継続特典、SBI証券のカード積立で最大6%ポイント還元のほか、メタルカード、コンシェルジュデスク、プライオリティパス、ラウンジサービスなどを提供する。アートや食の会員限定イベントやスポーツの世界大会への招待などのサービスも拡充した。

「Olive Infinite」がターゲットとするのは「デジタル富裕層」だという。仕事も遊びもアクティブ、スマホを使いこなし、自ら情報を収集し、ネットで投信を完結するような人々だ。こうした一連の取り組みにより、5年後には、資産運用残高10兆円、預金残高10兆円という野心的な目標を掲げている。

Oliveの足元に残る課題:「痒い所」からの脱却なるか

Oliveの金融ワンストップサービスや豊富なカード機能は、他のメガバンクの追随を許さないレベルといえる。もっとも、こうした「痒い所」的な機能よりも、多くのユーザーにとっては、アプリの使い勝手やポイント還元サービスなどお得感への関心が高そうだ。また、OliveのUIやSMBCグループ内に複数アプリが混在している点に改善余地があると考える。

MUFG:「エムット」開始 シニア・富裕層を攻める

三菱UFJ銀行は預かり資産3000万円以上の顧客を対象に、年会費無料のプラチナカードを提供する新会員組織を発表した。対象は顧客の2%ながら、個人預金の半分にあたる50兆円を狙う施策だ。「金利のある世界」の復活で預金の収益性が高まる中、一見攻めに見える大盤振る舞いの真の狙いは、親の世代交代に伴いネット銀行へ流れ出す「50兆円の相互流出」の防衛だ。メガバンク各社が仕掛けるLTV重視の防衛戦略の一環に位置づけられる。

みずほ:2%還元の衝撃 なぜメガバンクは金利よりポイントなのか

日銀の政策金利が1%まで上昇する中、3メガバンクは預金金利ではなく、クレジットカードのポイント還元で顧客獲得を競っている。みずほが打ち出した「常時2%還元」は、三井住友や三菱UFJの「最大20%」と何が違うのか。その狙いと背景を探る。