漆職人の9割がクマ遭遇、岩手・二戸市で対策講習会開催
漆職人の9割がクマ遭遇、二戸市で対策講習会

漆の生産量日本一を誇る岩手県二戸市で、漆を採取する職人がクマの危機に直面している。6月下旬に市が初めて開催した講習会で、参加者約40人の9割ほどがクマを見たり遭遇したりした経験があると回答した。6月には男性職人が山中でクマに襲われ負傷する被害も発生しており、市は緊急対策に乗り出した。

講習会で明らかになった実態

講習会は6月下旬、同市浄法寺町の総合支所で漆の職人らを対象に実施された。講師を務めた県自然保護課の渡辺颯太専門研究員(27)が「クマを見たり、実際に遭遇したりしたことがある人はいますか」と問いかけると、参加者の9割ほどが手を挙げた。

講習会開催のきっかけは、職人のクマ被害だ。県警などによると、6月18日昼、漆を採りに山林に入った男性職人(33)が、帰宅途中に親子とみられる2頭に遭遇。親グマとみられる1頭に顔や背中などを引っかかれ、軽傷を負った。

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職人特有の作業環境と被害の増加

市によると、職人が山中でクマに襲われるのは記録が残る2018年度以降初めて。クマ鈴などで音を出していたが、地形や風の影響で音が届きにくかった可能性があるという。

漆はウルシの樹液を精製した天然塗料で、食器や工芸品、建造物の塗装・接着に使われる。同市特産の「浄法寺漆」は国産漆の約8割を占め、国宝の中尊寺金色堂(平泉町)や日光東照宮(栃木県日光市)、世界文化遺産の金閣寺(京都市)などの保存修理に重宝されてきた。

漆職人はクマの行動が盛んな6~10月頃、山に入りウルシの幹に鎌やカンナで傷を付け、にじみ出た樹液を時間をかけて少しずつ採る。一人で早朝から夕方まで山中を回り、1日に80本近くをかくこともある。単独作業の上、作業に集中すると周囲の音などに気づきにくいなど、職人特有の作業環境はクマに遭遇する危険性がある。

今後の対策と影響

約20年にわたり漆を採取する職人の男性(76)は職人仲間が襲われたことを受け、「これまで以上に対策を強めなければならない」と警戒を強める。

市内の今年1~7月のクマ出没件数は55件で、前年同期の32件から1・7倍に増加。県浄法寺漆生産組合は人身被害を受け、撃退スプレーなどの購入費の半額補助(最大1万円)を始めた。市の担当者は「現時点で生産量への大きな影響は見込んでいないが、生産者の安全確保に向け、市としてできることを考えていきたい」と話した。

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