松橋事件国賠訴訟、高裁判決が検察の証拠隠しを厳しく非難
松橋事件国賠訴訟 高裁判決 検察の証拠隠し非難

「違法な取り調べで、自白に至り、有罪となった」――。松橋事件を巡る国賠訴訟の27日の福岡高裁判決は、再審無罪の決め手となった証拠の存在を明らかにしなかった検察だけでなく、長時間の取り調べを行った警察も厳しく非難した。確定審から約40年近く闘ってきた原告側の弁護団は「捜査機関に相当な反省を促す判決だ」と評価した。

「100点満点の判決」

判決後に福岡市内で開いた記者会見で、弁護団共同代表の斉藤誠弁護士(80)(東京弁護士会)は「警察の強引な取り調べや、重要な証拠を提出しなかった検察側の対応を断罪した100点満点の判決だった」と満面の笑みを浮かべた。斉藤弁護士は宮田浩喜さんの懲役13年が確定した上告審で1988年に弁護人となり、2020年に宮田さんが87歳で亡くなるまで、再審請求や再審公判を含め支え続けた。「『警察、検察の問題点が明らかになりましたよ』と宮田さんに伝えたい」と話した。

任意取り調べの違法性

捜査機関の取り調べの違法性を巡る過去の訴訟では、警察官や検事の発言内容が問われて違法と判断されたケースは少なくないが、任意の取り調べの時間の長さなどが重視され、違法性を認めた例は一部にとどまる。しかし、今回の高裁判決は、嫌疑を裏付ける証拠のない中、宮田さんを犯人とみなした上で1日最長約13時間の任意取り調べを行ったとして、「社会通念上相当と認められる方法や限度を逸脱したことは明らか」と違法性を認めた。斉藤弁護士は「任意捜査は録音録画もなく、長時間の取り調べが問題になることが(これまで)少なかった。今回の判決が(任意捜査の)問題提起となるだろう」とみる。

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証拠不提出を断罪

高裁判決は証拠を巡る検察の対応にも踏み込んだ。再審無罪の証拠となった布片を確定審で検察が明らかにしなかったことについて、「意図的なら犯罪的行為。過失でも職務怠慢だ」などと厳しく批判した。弁護団の衛藤二男弁護士(熊本県弁護士会)は「被告にとって有利な証拠を明らかにしないのは検察官の義務違反だと踏み込んだ新しい判断だ」と述べた。

再審制度の見直し

再審制度の見直しを巡っては、証拠開示の義務化などを柱とする改正刑事訴訟法が今月17日に成立。斉藤弁護士は「確定審での証拠の開示が進むようになれば、再審請求でも開示は進むはず。宮田さんのような冤罪被害者をなくすため警察、検察にはしっかりと対応を考えてもらいたい」と力を込めた。

一方、熊本県警の渋谷明紀・首席監察官は「判決内容を精査し、今後の対応を検討してまいります」、熊本地検の加藤和宏・次席検事は「判決の内容を精査し、関係機関や上級庁と協議の上で適切に対応する」とそれぞれコメントした。

識者の見解

元東京高裁部総括判事の藤井敏明・日本大学法科大学院教授(刑事訴訟法)は、「嫌疑が薄い中での長時間の取り調べは許されないとの判断で、自白に頼った捜査に警鐘を鳴らす判決だ。判決に従えば、検察は有罪に合理的な疑いが生じれば、自ら訴追を断念しなければならず影響は大きいが、公益の代表者としての役割を重くみたのだろう」と指摘した。

元検事の亀井正貴弁護士は「実際の捜査では、重要な証拠が簡単に見つからない中で、粘り強い取り調べで真相解明に取り組んでいる現状がある。暴行やどう喝は許されないが、『時間』で違法性が線引きされるのは捜査機関にとって厳しい判決だ」と述べた。

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