JA全農とちぎは3日、2026年産米の概算金を決めた。主力のコシヒカリ(1等、60キロ)は1万5500円で、過去最高を更新した昨年から一転、1万2500円の大幅減となった。昨年の価格高騰による販売不振や生産量増が主な理由で、農家にとって厳しい秋となりそうだ。
主要銘柄も軒並み5割近く減
JAが同日、宇都宮市内で開いた運営委員会で決定した。コシヒカリの概算金は前年当初比1万2500円減で、1万6300円だった24年を割り込んだ。コシヒカリ以外の主要銘柄も軒並み5割近く減らし、県オリジナル品種「なすひかり」は1万4700円、「とちぎの星」は1万4500円、県内で作付けの多い「あさひの夢」が1万4300円などとなった。
JAは大幅な減額の理由について、「資材価格が高止まりする中、生産者が営農を継続できる水準を目指したいが、消費者が購入できる価格も目指す必要がある。昨年産が集荷競争の結果、概算金や価格が高騰したことへの反省を踏まえた」などと説明。販売のメドが立てば、追加金を支払う意向という。
農家からは衝撃と不安の声
概算金は、農家からコメの販売委託を受けたJAが集荷時に支払う仮渡し金で、作況や需要見通し、生産コストなどを加味して決定する。米穀安定供給確保支援機構が4月に発表した生産コストの指標は、資材価格などの高騰を受けて2万円を超えた。
概算金額を知った大田原市の女性(50)は「下がると聞いていたがここまで下がるとは」とショックを隠しきれない。女性は15代続く専業のコメ農家で、長男(26)と約20ヘクタールの水田を手がけており、「(24年並みだが)経費が上がる中では完全に原価割れ。先祖から引き継いだコメ作りをやめるわけにはいかない。なんとか方策を考えたい」と話した。
需給調整の難しさと今後の見通し
昨年は概算金の大幅増を受けて、店頭での小売価格も高騰し、9月以降の県産コシヒカリと全国の小売価格は5キロ4000円台に上昇した。24年夏頃からの「令和の米騒動」で、政府は計59万トンの備蓄米を放出して需給の安定を図ったが、高値を嫌った消費者のコメ離れが進み、今年6月末時点の全国の民間在庫は過去最高水準の243万トンに上った。
需給の調整をしたいJAの意向をよそに、26年産主食用米の作付け意向は高値を背景に増加し、加工用米などへの変更を呼びかけても反応は薄かった。
米穀を販売する「お米ひろば」(宇都宮市)は、今回の決定を受け、26年産の店頭価格は5キロ1000円程度下がると試算する。同店は現在、25年産コシヒカリ5キロを3834円(税込み)で販売している。当初は4300円でスタートしたが、値下げを重ね、7月には原価割れした。佐藤直人社長(52)は「来年産以降を考えると、小売価格を極端には下げにくい」と話し、「26年産は5キロ2500~3000円が相場となり、特売で2000円程度で売る店も出てくるだろう」と予想する。
離農懸念と政府の対応
昨年の最高値から一転、2026年産米の概算金が急落した背景には「コメ余り」がある。国のコメ政策と市場動向に翻弄され、「コメ離れ」どころか離農する農家や、廃業する集荷業者も出てきかねないとの懸念が広がっている。
異変は昨年秋からあった。「世間でコメがないと騒いでいた昨年10月、コメ余りを見込んだのか民間業者が集荷をやめた」と県南の農家男性(63)は振り返る。昨年は民間業者が60キロあたり3万円を超える高値を示すなど、しれつな争奪戦を繰り広げた結果、概算金や米価が高騰した。男性は「今年は『1万円なら買います』と、JAより低い価格を出してきた。価格を下げるどころか、『買いません』という対応をされ、買い取り先が見つからない農家もいる」と打ち明ける。
このため、今年は農家がJAを頼り、出荷契約が殺到しているというが、コメがだぶつく中でJAも渋い対応という。男性は毎年春に出荷量の仮契約を結ぶが、「今年は4月に仮契約した分以外は買い取り価格を下げると言われた。こんなことは初めてだ」と絶句する。
ある小売業者は「高値の25年産を仕入れて売れないため、数千万円の赤字という集荷業者の話も聞く」と話す。県央の農家男性(62)は「農家を殺す気なのか。やめるきっかけを探している農家もいる。今年の数字をもって離農する人が出てくるだろう」と憤りをあらわにした。
国は2日、米価を下支えするため、政府備蓄米21万トンの買い戻しを正式に決めたが、効果は未知数だ。



