奈良県十津川村で、観光地として知られる「谷瀬の吊り橋」などのつり橋をバイクで渡ったとする目撃情報やSNSの投稿が相次ぎ、橋が壊れる危険があるとして、村が「二輪車通行禁止」の看板を設置し、注意を呼びかけている。しかし、村内のつり橋41本は村道や林道であり、法律上、二輪車の通行を禁止できる歩行者専用道ではない。村は専用道への変更に必要な資料や調査に人手を割けないため、観光客らのマナーに頼らざるを得ず、強い自粛を求めている。
SNS投稿の拡散と村の対応
村によると、6月1日に村内のつり橋「林橋」をバイクで走行したとみられる男性の投稿が拡散。村に問い合わせが10件ほど寄せられたため、橋の出入り口に「二輪車通行禁止」の看板を設置した。また、6月上旬には地元住民から谷瀬の吊り橋をバイクで走行する観光客がいたとの連絡があり、看板を置くとともに、SNSでも「吊り橋をバイクで走らないで!!」などと投稿して注意を呼びかけた。
村内のつり橋のうち、長さ297メートルで最長の谷瀬の吊り橋は、谷瀬地区の住民が建設費を出し合い、1954年に完成。以来、生活道路として利用され、観光地としても有名になった。
老朽化とバイク通行の危険性
村建設課によると、橋は鉄線とワイヤを中心に構成されており、定期的に補修工事が行われている。しかし、橋全体の重みや通行による負荷を支えるメインのワイヤ「主索」が建設当時のままで、老朽化が進行している。重量があり、振動も激しいバイクの通行は、つり橋の損傷や落下の危険があるという。
さらに、林橋などその他のつり橋は補修はしているものの、谷瀬の吊り橋より補修頻度が低く、危険性が高いとされる。
取締りの限界と住民の訴え
村内のつり橋は生活道路であり、道路交通法上の歩行者専用道ではないため、警察がバイクの通行を目撃しても取り締まれない。専用道に変更するには、設計図を基にワイヤの太さから耐荷重を測定するなどの調査が必要だが、つり橋の多くは昭和20~30年代に当時の村民の経験と感覚で造られたため、設計図自体が存在しないという。
村では全長639キロに及ぶ村内道路の維持管理で手いっぱいで、変更に着手する人手の余裕がない。同課の大前貴広課長は「歩行者が通るためのつり橋で、バイク走行の想定はしておらず、危険なためやめてほしい」と話す。
無謀な通行でつり橋が壊れた場合、最も影響を受けるのは住民だ。谷瀬地区に住む男性(68)は「つり橋は村の共有財産。どれも古く、バイクで走行した場合、いつ崩落してもおかしくない」と訴える。SNSの投稿については「目立とうとする目的のために身勝手な行動をして、ケガでもされたら困るので控えてもらいたい」と苦言を呈した。



