熊本地震の発生後に起きた商業施設「イオンモール熊本」(熊本県嘉島町)の爆発事故を巡り、複数の客が避難後に施設に再入館し、一部は屋上駐車場の車内にいたことが、読売新聞の取材でわかった。客も爆発に巻き込まれていた恐れがあり、避難後の安全管理の難しさが浮かび上がる。
避難後に再入館した客の証言
「爆発するなんて考えなかった。もし、あのまま建物に残っていたらと思うとぞっとする」。避難後に再入館した熊本市中央区の会社員女性(29)は、声を震わせた。
地震が起きたのは7月28日午後4時27分頃。イオンによると、施設内には約3000人の客と1300~1500人の従業員がいたが、約30分後の午後5時に屋外への避難が完了した。
再入館をめぐる対応と実態
イオン側は、避難後は安全が確認できるまで客も従業員も再入館しないと定めたマニュアルに基づき、現場で再入館しないよう呼びかけていた。だが、貴重品や車の鍵を取りに戻りたいと従業員が要望したため、個別に再入館を許可していた。
読売新聞の取材では、熊本市の女性ら複数の客も施設内に戻っていた。その後の爆発では、2階部分が激しく損傷しており、巻き込まれるリスクがあった。
屋上駐車場での待機と避難
女性は夫(29)と幼い子ども2人と2階のゲームセンターにいた際、地震に遭遇した。すぐに屋外に避難したが、3階部分にあたる屋上駐車場に車を止めていたため、避難してきた出入り口から5分後に再入館した。
この出入り口に従業員はおらず、停止していたエスカレーターで屋上に向かった。途中、2人の従業員の姿が見えたが、「こちらに気づかなかったのか、注意されなかった」という。
地上の駐車場の出口は混雑しており、屋上で待機することにした。午後5時15分頃、「施設内で火事が起きているらしい。逃げた方がいい」と、横にあったワゴン車の男性から告げられた。周囲の車のうち2台には人の姿が確認できた。この2台にも避難を呼びかけ、同5時20分頃、イオンから退避した。
<火事らしくて、屋上の駐車場から避難した>。この時、友人にLINEでイオンから出たと連絡していた。消防やイオンによると、施設内で火災の発生はなかったという。
爆発が起きたのは、約30分後の午後5時50分だった。LPガスが漏れて引火したとみられる。テナントの従業員7人が亡くなり、客の死者はいなかった。
専門家の指摘と今後の検証
女性は「今となっては車を取りに行ったのは軽率な行動だった」と話した。
熊本県八代市の会社役員男性(76)も避難後、暑さをしのごうと午後4時45分頃に再入館し、5分ほど施設内に滞在した。避難時は「出てください」という声が聞こえたが、施設内に戻る際には何も言われなかったという。「施設の外観は大丈夫そうだったので入った。一緒に入った人も何人かいた」と振り返った。
イオンは客の再入館は「把握できていない」としている。出入り口は10か所あり、自由に出入りできる状態だったという。同社は「全ての出入り口へのスタッフの配備は難しく、客の行動を全て止められるわけではない」としている。
避難完了は従業員が施設内を目視で確認したとしているが、屋上も調べたかどうかは確認できていないという。客の再入館の有無などはイオンの事故調査委員会が検証する見通し。
ビルの防災計画に詳しい東京大の広井悠教授(都市防災)は「今回の事故を教訓に、客は地震後の施設に戻れば危険性があると認識して再入館は控えるべきだ」と指摘。「施設側は、屋外に直射日光や雨を避けるための屋根のある退避場所を設けた上で、施設の出入り口の前に障害物を置くなど再入館の防止策を取ることが望ましい」と語る。



