やまゆり園事件10年 弁護士が指摘する「能力不存在推定」の根深さ
やまゆり園事件10年 弁護士が指摘する能力不存在推定

神奈川県の県立津久井やまゆり園で元職員が入所者19人を殺害した事件から10年。事件後、知的障害者の入所施設での虐待が相次いで明らかになった。障害者の権利擁護に詳しく、複数の施設の第三者調査に関わった弁護士の佐藤彰一・国学院大名誉教授は、職員の不適切な対応の背景に誤った認識があると指摘する。

施設内で繰り返された虐待

佐藤氏によると、津久井やまゆり園では個室に外から鍵をかけて長時間閉じ込めたり、身体拘束をしたりする虐待が繰り返されていた。ある女性は車いすに体を固定するY字拘束帯で長時間縛り付けられていた。

身体拘束は障害者虐待防止法で定める「切迫性」「非代替性」「一時性」の三つすべてを満たす必要があるが、津久井では一つでも当てはまれば拘束できると誤って認識されていたという。

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全国に広がる問題

神奈川だけではない。千葉県立の入所施設では2013年、職員が19歳の少年を蹴って死なせる事件が発生。佐藤氏は検証に携わった。職員たちは最初、入所者のパニックを抑えるために殴っていたが、数年後にはパニックを起こしていない時にも殴り始めた。蹴られた少年はソファで寝ていただけだった。

佐藤氏は「全国的に今も問題は解消されていない。グループホームなどにも拡散しているのではないか」と懸念する。

「能力不存在推定」の弊害

不適切な支援が起きる理由の一つは、入所施設が「行き場のない人を受け入れる最後のとりで」という位置づけのまま変わっていないことだと佐藤氏は指摘する。施設側が「うち以外では受け入れてもらえない人」と見てしまい、「何も分からない、できない」と決めつけてきた。この考えを佐藤氏は「能力不存在推定」と呼ぶ。

この考えを抱いたまま職員と接することで、支援が形骸化し、虐待が常態化する構造があるという。

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