音楽バンドの曲を楽譜にした「バンドスコア」を無断で模倣され、サイト上で公開された場合、スコアの出版社は賠償を請求できるか。この点が争われた訴訟で、最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)が9日、判決を言い渡す。
バンドスコアは曲そのものと異なり、一般に著作権で保護されていないが、制作には高い技術や労力が必要になる。スコアのように、著作権の対象外である成果物への「ただ乗り」に対し、最高裁が賠償を請求できるかどうかの判断の目安を示す可能性がある。
原告は楽譜出版社「フェアリー」、被告はサイト制作会社
原告は楽譜出版社「フェアリー」(東京)。日本音楽著作権協会(JASRAC)に使用料を払い、バンドの楽曲の音源を「耳コピ」して編集したバンドスコアを販売している。
二審判決によると、被告のウェブサイト制作会社(東京)は2008年以降、原告のスコアを購入。模倣した579曲のスコアを自社サイトで無料公開し、広告収入を得ていた。原告から公開終了を求められ、18年にサイトを閉鎖している。
著作権法では、著作権の対象となる著作物を「思想または感情を創作的に表現したもの」としている。曲や歌詞は著作物だが、楽譜は「創作的な表現ではない」との理由で、保護対象にならないとの解釈が一般的だ。
高裁は「音楽文化の発展を阻害」と指摘
原告は、被告の無断公開で自社のスコアが売れなくなったとして提訴。スコアが著作権で保護されないとしても、民法の不法行為にあたるとして賠償を求めた。
一審・東京地裁は、原告と被告のバンドスコアには相違点もあるとして、模倣を認めず、原告の請求を棄却した。
だが二審・東京高裁は、特有の表記や誤りが一致していることなどから模倣を認め、約1億6900万円の賠償を被告に命じた。重視したのは、スコアが多大な労力と専門技術でできた「汗の結晶」であることだった。
バンドの曲は録音現場で演奏しながら練り上げられ、曲の完成後に楽譜が作られることが多い。曲を聴きながら楽譜に書き起こす「採譜者」には楽器の特性などの知識が欠かせず、スキルにより違いも生じる。
高裁は、バンドスコアの無断模倣が許されれば、制作者側の売り上げ減少などでスコアの供給が閉ざされかねないと指摘。「音楽出版業界が衰退し、音楽文化の発展を阻害する結果になりかねない」と述べた。これに対し、被告側が上告した。