支え合う信徒たち、笑顔の教会の秘密…「必要とされる」喜びの循環
支え合う信徒たち、笑顔の教会の秘密…「必要とされる」喜びの循環

大阪市西成区にあるメダデ教会の信徒20人は全員がアオカン(野宿)の経験者で、半数は刑務所や拘置所に入っていた。酒に溺れ、ゴキブリがはう自宅で、ふん尿にまみれて生活していた者もいる。暗くすさまじい過去の持ち主ばかりだが、教会では皆、楽しそうにしている。

牧師の西田好子(68)はその理由を「ここでは『あれやって』『それ頼むわ』って、みんなが誰かの役に立ててる。仕事や用事を頼まれるのが、うれしいねんよ」と解説する。

奉仕が生む役割と喜び

朝4時の買い出し、仲間の食事や移動の介助、入院中の信徒の見舞い、野宿者への配給の準備。西田はこれらを「奉仕」と呼び、信徒の担う教会活動の核に位置づける。家族に見放され、職場を追われ、居場所を失った彼らには、どれもが新鮮な体験だ。

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西田は「考えてみたら私、滋賀で小学校の教師やってた昔から、やってること、変わらへんねん」と話す。自他共に認める熱血教師だった西田は、教え子たちの姿をこう振り返る。

「勉強できる子が、みんなに教えてる。足の速い子はマラソンでみんなを引っ張ってる。強い者が弱い者を助けるよう指導してたら、落ちこぼれもいじめもない、素晴らしい教室になったんや」

肩書は牧師に変わってもやり方は変わらなかったというわけだ。

「息子やと思って面倒みたれ」

信徒のダイコク(75)は、認知症で徘徊癖のあるナカニシ(80)の世話を任され、よく笑うようになった。ダイコクにはつらい過去がある。妻を交通事故で亡くし、幼い息子を育てきれずに生き別れた。

「『息子やと思ってナカニシの面倒みたれ』と言ったんや。初めはようケンカもしてたけど、今はまるで血の通った家族のように食事から何から、世話してる」と語る。

そのダイコクも足が悪く、長距離の移動には他の信徒に車いすを押してもらう。「私は必要とされている」。その思いの循環が、笑顔の絶えない教会の秘密なのかもしれない。

性の不一致と向き合う信徒

個性派ぞろいの信徒の中で、ひときわ目を引くのはサカシタ(54)だ。体は男性、心は女性。肩まで届く長髪は、以前は腰まであったらしい。サカシタが心身の性の不一致に気付いたのは小学生の時。隠れて女装を始め、中学卒業後、北陸の実家を出た。「都会なら堂々と女装できる」と思ったという。

だが社会は奇異の目で見続けた。定職につけず、30歳代後半で大阪市西成区の釜ヶ崎(あいりん地区)へ。ミニスカートをはき、空き缶拾いと炊き出しで食いつなぐ生活を長年続ける中で、西田に誘われ教会に入った。

聖書には同性愛を否定的に記した部分もあるが、西田の解釈は「聖書は時代、時代で捉え方も変わるんや。神がそのようにサカシタを作りはった。それでええやないの」というものだ。

最初は戸惑った信徒たちも、時折、訥々と下ネタを放つ新顔を「おもろいヤツ」と受け入れた。サカシタの笑顔が増えた。仕事のため、外でスカートをはくことはやめたが、アパートの中では今も女性の格好だ。それを誰も笑ったり、とがめたりはしない。

「ここには在日韓国人も被差別部落の出身者もいてるし、障害で言葉がうまく出ん子もいてる。みんないじめられてきたから、お互い、気持ちが分かるんや」と西田は語る。

西田にも小学生の頃、いじめられた経験がある。関節炎で医師に運動を禁じられ、先生に背負われて移動しているのを揶揄された。その後の人生も挫折続きだ。「でも私には、ナニクソがあった。私は、この子らにもナニクソを持ってほしいんや」と話す。

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西田の言うナニクソを前面に出す信徒はいない。だが、違いや弱さを認め合う姿は、排除と非寛容のはびこる社会を静かに告発しているようにも見える。