香港を拠点に中国では「禁書」とされる本を販売し、中国当局に拘束された林栄基さんが死去した。林さんは、香港の銅鑼湾書店の経営者として知られ、中国の言論弾圧に抗い続けた人物だ。その死は、香港のみならず台湾や日本に対しても、自由と民主主義の重要性を改めて問いかけるものとなっている。
禁書販売と拘束の経緯
林栄基さんは、香港で銅鑼湾書店を経営し、中国本土では発禁となっている政治書や歴史書を販売していた。2015年、中国当局に拘束され、約8か月間拘束された後、香港に戻ることができた。しかし、その後も中国当局の監視下に置かれ、2018年には台湾へ亡命した。台湾では台北で銅鑼湾書店を再開し、引き続き禁書の販売を続けた。
台湾での襲撃と親中派の妨害
林さんは台湾でも親中派からの攻撃に直面した。2020年4月21日、台北の路上で男らから赤いペンキを浴びせられる襲撃事件が発生。犯行グループは逮捕されたが、別の親中派グループが「銅鑼湾書店」の商標を先に登録し、出店を妨害する動きもあった。台湾内の一部からは、「香港の問題を台湾に持ち込み、中台関係の緊張を高めている」との批判もあった。
林さんの真の目的
林さんは中国の「人民」を憎んでいたわけではない。香港時代も中国本土からの客に禁書を販売し、対話を重ねてきた。彼が目指したのは、中国の人々が政府の抑圧から解放され、香港人も中国人も個人の尊厳と自由を持つ主体として互いを尊重する社会だった。台湾への亡命後は、「自由が息づく台湾こそ人生を託す場所」と語り、台北で最期を迎えた。
日本へのメッセージ
林さんは日本に対し、「自由と民主主義が成熟し、知的水準の高い国」と敬意を抱いていた。かつてのインタビューでは、「日本の読者は非常に熱心で、香港や台湾、中国の政治状況について深い知識と問題意識を持って訪ねてくる」と語り、日本人の知的好奇心の高さを評価していた。また、台湾の銅鑼湾書店には日本の文芸書や歴史書、哲学書の翻訳本も並び、日本社会や民主主義の歩みにも強い関心を寄せていた。
林さんの死は、香港の次に台湾、そして日本が標的になる可能性を示唆している。言論弾圧と闘い続けた彼の警告は、自由を守るために何が必要かを問いかけている。



