電気自動車(EV)の普及を左右するバッテリー技術が、新たなフェーズに入っている。従来のリチウムイオン電池に代わる次世代バッテリーとして、全固体電池やリチウム硫黄電池、ナトリウムイオン電池などが開発され、航続距離の大幅な延長や充電時間の短縮が期待されている。中でも全固体電池は、現在のリチウムイオン電池と比較してエネルギー密度が2〜3倍に向上し、航続距離1000km超も現実味を帯びてきた。
全固体電池の実用化が目前に
全固体電池は、電解質を液体から固体に変えることで、発火リスクを低減し、エネルギー密度を高められる。トヨタ自動車は2027〜2028年をめどに全固体電池を搭載したEVを市場投入する計画で、すでにプロトタイプの走行テストを開始している。また、日産自動車も2028年までに全固体電池を搭載したEVを発売する目標を掲げ、パイロットラインを稼働させている。これらの技術が実用化されれば、EVの航続距離は一気に伸び、ガソリン車との差はほぼなくなる。
リチウム硫黄電池とナトリウムイオン電池の可能性
全固体電池と並んで注目されるのがリチウム硫黄電池だ。硫黄は資源が豊富で低コストであり、理論上のエネルギー密度はリチウムイオン電池の約5倍に達する。しかし、サイクル寿命や充放電効率に課題があり、実用化にはまだ時間がかかると見られている。一方、ナトリウムイオン電池は、リチウムよりも安価で資源が豊富なナトリウムを使用するため、低コスト化が期待される。ただし、エネルギー密度はリチウムイオン電池よりも低く、主に短距離向けの低価格帯EVに採用される可能性がある。
欧州や中国も技術開発に注力
欧州では、ドイツのフォルクスワーゲンが米国系スタートアップのQuantumScapeに出資し、全固体電池の開発を加速している。中国では、CATL(寧徳時代)がナトリウムイオン電池の量産を開始し、2023年には第一世代製品を搭載したEVが登場している。また、BYDも独自のブレードバッテリー技術で知られ、リン酸鉄リチウム(LFP)電池の改良を進めている。これらの動きは、EV市場の競争を一層激化させると予想される。
コストとインフラの課題
次世代バッテリーの実用化には、コスト低減と充電インフラの整備が不可欠だ。全固体電池の製造コストは現時点で従来のリチウムイオン電池の数倍に上り、量産効果によるコストダウンが求められる。また、急速充電に対応したインフラの整備も急務で、日本政府は2030年までに30万基の充電器設置を目標に掲げている。これらの課題をクリアすれば、EVの普及はさらに加速するだろう。



