緊急避妊薬の薬局販売で子どもへの性暴力が見えなくなる危険性
緊急避妊薬の薬局販売で性暴力見えなくなる危険

2026年2月から緊急避妊薬の薬局販売が始まったことで、これまで産婦人科医が果たしてきた役割の一部が薬局に移行し、新たな課題が浮上している。特に懸念されるのは、若年層、とりわけ16歳未満の子どもに対する性暴力やDVの早期発見の機会が失われる危険性だ。

産婦人科受診が気付きの場だった

これまで、緊急避妊を求めて産婦人科を受診した時点ですでに妊娠しているケースでは、医師が遅滞なく妊娠の診断を行い、同時に性感染症への対応や、より確実な避妊方法について助言することができた。つまり、産婦人科への受診そのものが、患者にとって重要な気付きや相談の機会となっていた。

日本産婦人科医会の常務理事である種部恭子医師は、緊急避妊薬の薬局販売によって、これまで産婦人科医が担ってきた「性暴力やDVに気付き、次の支援につなげる」という役割が損なわれることを強く懸念している。特に、性的同意年齢に達していない16歳未満の子どもへの対応には、不十分な点が残ると指摘する。

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「明らかに父親ではない男」の存在

種部医師は今年5月、メディア関係者が集まった懇親会で、次のような事例を挙げた。「13歳の女の子がクリニックにやってきたときに、その後ろに明らかに父親ではない男がついてくることもよくある。これまで産婦人科は性暴力や性的搾取による妊娠に気付く入り口と考えてきた。緊急避妊薬は出口ではなく、入り口なんです」。

性と生殖に関する権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)は、性交するかしないか、産む・産まない、いつ・何人産むかを自分で決める権利を含むが、暴力によってこれらの権利が奪われるケースが後を絶たない。産婦人科医は、こうした背景を察知し、適切な支援につなげる重要な役割を果たしてきた。

薬局販売のルールと限界

今回の薬局販売では、これまで産婦人科医が処方時に直面してきた問題を踏まえ、いくつかの条件が設けられた。具体的には、薬局の面前での服用、妊娠の有無を確認するチェックリストの活用、3週間後の妊娠検査による効果確認、男性への販売禁止などが盛り込まれている。

しかし、性暴力による妊娠が疑われる場合、被害の事実を聞き取り、医療や法的支援につなぐことは容易ではない。薬剤師には、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップセンターなどの公的相談窓口の情報提供が求められるが、被害者が子どもの場合、自ら相談に行くことは困難であり、児童相談所への通告には相当な知識と訓練が必要となる。

薬剤師研修の不足が課題

現在行われている薬剤師向けの研修には、子どもへの性暴力に対応するために必要な内容は含まれていない。このため、薬局の現場で性暴力の兆候を見逃すリスクが高まっている。10代の妊娠のうち約28%が出産に至っているというデータもあり、早期発見と支援の重要性はますます高まっている。

緊急避妊薬の薬局販売は、アクセス向上というメリットがある一方で、性暴力の早期発見や予防という観点からは新たな課題を突きつけている。産婦人科医と薬剤師の連携強化、そして薬剤師向け研修の充実が急務となっている。

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