東大生が実践する「知識を動かす」訓練とは?入試問題から読み解く地頭力の正体
東大生が実践する「知識を動かす」訓練とは?入試問題から読み解く

東京大学の学生は、特別に記憶力が優れているから難しい入試を突破できるわけではない。著者が注目するのは、覚えた知識をそのまま取り出すのではなく、別の知識と関連付け、状況に応じて使いこなす力だ。東大入試でも問われるという「知識を動かす力」は、どのような訓練で身につくのだろうか。

東大受験生が実践する「知識を動かす訓練」とは

著者は、東大生の優れた点は「動的知識」を使いこなせることにあると指摘する。決して、クイズ番組で答えを出せることに「すごさ」があるわけではないという。東大入試という「地頭を問う」入試形式は、そのまま動的知識の有無を測る試験だと言える。

例えば、東京大学の世界史の入試問題が分かりやすい。2006年の問題では、ローマ帝国の覇権下にあった古代地中海世界について、5世紀から9世紀にかけて3つの文化圏が成立した過程を、宗教の問題に着目しながら、7つの語句(ギリシア語、聖像画(イコン)、グレゴリウス1世、クローヴィス、ジズヤ、バルカン半島、マワーリー)を全て用いて600字以内で記述するよう求めている。

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このように、一定のキーワードが与えられた上で、特定のテーマについて論じる形式の問題がほぼ毎年出題されている。キーワードを単に羅列するだけでは不十分で、それぞれの言葉の意味を正確に理解し、相互の関係性を説明し、歴史的な流れの中で位置づけながら、1つの論理的なストーリーとして組み立てなければならない。7つのバラバラのキーワードの使い方を考えなければならないのが難しいポイントだ。

「どう関係する?」に答えながら知識を動かす

「グレゴリウス1世はこんな人物だった」という知識が頭の中に入っていたとしても、この問題は解けない。「グレゴリウス1世ってこの文脈だとどう使うんだ?」「宗教と関連させるから、西ヨーロッパのカトリック文化圏の確立に関わる人物という扱いで書けばいいのかな?」というように、キーワードを膨らませて考える必要がある。

こうした「どう関係する?」という問いに答えながら、1つの知識を縦横無尽に「動かして」いく。これが東大入試で求められる力であり、東大受験生はそのための訓練を徹底的に積んでいる。だからこそ、東大生の頭の中の知識は「動的」になっていくのだ。

世界史で説明したが、他の科目も同様だ。数学では、公式を単に暗記するのではなく、「なぜその公式が成り立つのか」を証明したり、その公式を応用して見たこともない新しい問題を解く力が求められる。英語では、1つの単語や文法を知っているだけでは不十分で、1つの英単語と関連付けられる英単語にどのような種類があるかを、「類義語」や「反対語」といった括りではなく広く理解することが求められる。

東大入試は「静的知識」ではなく「動的知識」を問う

つまり、東大入試のすべての科目が、「静的知識」ではなく「動的知識」を問う設計になっている。「この条約は何年何月何日に締結されましたか?」という問題であれば、勉強したばかりの高校生でも答えられないことはないだろう。確かに難しいとはいえ、訓練すれば誰でもある程度はできるようになる。しかし、東大の入試問題は解けない。キーワードが与えられて、そのキーワードをいかに関連付けるかが問われるからだ。

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東大生は「10個の関連付け問題」が得意で、どんな単語を言っても10個つなげて違う言葉に変換することができる。著者はこれまで200~300人では足りないくらいの東大生と話してきたが、どんな科目であっても、どんなキーワードであっても、できない人はほぼ見かけたことがないという。これは彼らが「特別に記憶力がいい」からではなく、知識を常に「動かす」訓練を積んできたからだ。