Vポイントマーケティングは、Snowflakeが9月10日に開催したカンファレンス「SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO 2026」内で、取得する購買データの活用について、今後の展望とそれを支えるデータ基盤構築の取り組みを語った。
会員数は現在1.3万人を超える。2003年に「Tポイント」の名称で共通ポイントを開始して以来、2024年に「Vポイント」へのリブランディングを実施。2026年には書籍変更があり、三井住友カードが親会社になるなど、さまざまな変化がありながらも着実に会員数を伸ばしてきた。
データの安全性を保つ3つの取り組み
Vポイントには、会員の属性データに加え、Vポイント連携企業での購買データなどを蓄積。また、親会社の三井住友カードが持つカード会員の属性データに加え、モバイル総合金融サービス「Olive」の加盟店購買データや決済データを取得している。
Vポイントマーケティングは、ユーザーにVポイントのサービスを提供することに加え、加盟店の商品開発やCRM構築の支援などを手掛けている。
「2020年ごろからデータの近代化に取り組んできた」と話すのは、Vポイントマーケティングテクノロジー戦略本部 本部長の小倉健太郎氏だ。セミナーでは、同社のビジネスを支えるデータ基盤を安全に運用するためのセキュリティの取り組みを3つ紹介した。
データクリーンルームで安全な連携を実現
1つ目は、プライバシーポリシーを通じて、データをどのように活用するのかを明文化すること。規約の範囲内で、適切に取り扱うことを明記している。
2つ目は、Vポイント基盤のセキュリティ強化だ。従来のデータウェアハウス(DWH)の分析に必要なPII(個人識別情報:Personally Identifiable Information)を、よりセキュリティ強化するような形で実装してきた。
3つ目は、AI向けポリシー策定。AIによるデータ利用を想定したポリシー策定を実施してきた。
社外を含む組織間のデータ連携では、データクリーンルームを積極的に活用している。データクリーンルームとは、個人情報を保護したうえで、複数の組織をまたいだデータの計測や分析ができる仕組みだ。
DWHからユーザーの属性データや、データから導き出されたライフスタイル予測値などの各種データと、統合用のPIIをデータクリーンルーム内に保存している。
「データクリーンルームの中では、クライアント企業ごとに領域を分けて動かしているため『A社がB社のデータをのぞける』ようなことは、構成上発生しない。お客さまのデータを厳密に保護しながら、自由に分析できるシステムを提供している」(テクノロジー戦略本部 エンジニアリング部ポイント&データ基盤チーム 藤田弘大氏)
また、Snowflakeのデータシェアリング機能を用いることで、ファイルを複製・作成せずに、ファイルレス・コピーレスでデータの連携を実現できるという。
「AIペルソナ」「グループ横断のアドネットワーク」が今後の戦略の柱
安全なデータ連携を実現する環境整備に加えて、同社は「購買理解を深める」取り組みも強化している。
同社が小倉研究所、カルチュア・コンビニエンス・クラブと共同で進めているのが「AIペルソナ」の開発だ。AIエージェントが人の代わりに買い物をする「エージェンティックコマース」の時代を見据え、AIが解釈しやすいテキスト形式(文章)で購買の特徴を抽出することを目指している。
ペルソナ生成の手順について、AI戦略本部 AI開発部チーフ AIエンジニア 三宅悠一氏は次のように説明する。
「Vポイントマーケティングでは一人ひとりのユーザーが『いつどこで何を買ったのか』のデータを取得できるため、まずは商品ごとにデータを集約する。次に、似たような商品をクラスタリングして抽出し、クラスターごとに『こういった商品を買っている人たちのペルソナ情報として、どのような傾向が考えられるか』などとプロンプトベースでペルソナの特徴を導き出していく」
本研究について、プレスリリースでは以下のように説明している。
これまで、大規模言語モデル(LLM)を用いた行動分析は、主に単一ドメイン(特定の業態やサービス)内での履歴活用を前提としてきました。しかし、多くの生活者は複数の業態やサービスを横断しており、断片的なデータだけではその全体像を捉えきれないという課題がありました。本研究では、LLMを活用してマルチドメイン(複数業態)の行動履歴から、一貫性のある文章化されたペルソナ情報を抽出・統合する手法を研究し、その有効性を実証しました。
AIペルソナの活用で、より多角的に購買理解を深められると説明。「正確性や公平性の確立」などの課題を解消しながら、実証できる状態を作り上げていきたいと話した。
さらに同社は、データ分析によって購買理解を深めた先で、ユーザー一人ひとりに最適な広告を配信する「アドネットワーク基盤」の構築も計画している。Vポイントアプリ、三井住友銀行アプリ、V-PASSなど、各グループのサービスを横断し、アプリ上で広告展開を強化する方針だ。
グループ横断で配信先を提供できる点と、Vポイントを軸としたデータ活用が強みになり、ターゲティングの精度を高め、効率的な広告配信の支援ができるのではないかと、同社は説明する。
AIが人間の代わりに買い物をする――エージェンティックコマースの実現に向けては、AIが消費者の嗜好(しこう)を理解して、消費者に近い判断ができるようになる必要がある。同社の購買理解の強化や1to1マーケティングの実装は、今後のデータドリブンマーケティングにおける指標となるかもしれない。



