29歳の女性を突然襲った足裏の痛み。いくつもの病院を巡っても「原因不明」「疲れのせい」と言われ続けた症状が、実は関節リウマチだったという事例が報告されている。この経験が彼女を看護師の道へと導いた経緯と、関節リウマチの早期発見・治療の重要性について、きくち総合診療クリニックの菊池大和医師が解説する。
足裏の痛みから始まった闘病
新井さん(仮名)は29歳の時、特にきっかけもなく足裏に痛みを感じ始めた。最初は「疲れがたまっているのだろう」と軽く考え、市販の湿布薬で様子を見ていた。しかし痛みは徐々に悪化し、歩くことさえ辛くなったため、近所の整形外科を受診した。レントゲン検査では異常は見つからず、医師からは「疲労が原因でしょう」と言われ、消炎鎮痛剤を処方されただけであった。
その後も痛みは治まらず、別の病院でMRI検査を受けたが、やはり異常は見つからなかった。医師からは「特に問題はない」と言われ、心因性の可能性も示唆された。新井さんは「自分でも原因がわからず、もしかしたら気のせいなのかと思い始めていました」と振り返る。
症状が現れてから約半年後、今度は手指の関節にこわばりと痛みが出現した。朝起きたときに指が動かしづらく、ペットボトルのふたを開けるのも困難になった。この症状をネットで調べた新井さんは、関節リウマチの可能性に気づき、リウマチ専門医を受診。血液検査の結果、リウマトイド因子と抗CCP抗体が陽性であることが判明し、ようやく関節リウマチと診断された。
関節リウマチの特徴と早期診断の難しさ
菊池医師は、新井さんのケースについて「最初の段階で関節リウマチを疑うのは難しかった」と述べる。関節リウマチは女性に多く、発症率は男性の約4倍。発症のピークは30〜50代だが、20代での発症も珍しくない。妊娠や出産をきっかけに発症することもあるという。典型的な症状は手指の関節の腫れや痛み、朝のこわばりだが、初期には足裏や膝など非典型的な部位に症状が出ることもある。
「初診時に足裏の痛みだけでは、関節リウマチを疑うのは無理もありません。ただ、もし医師が『痛みが続いたら再受診してください』と伝えていれば、次の受診時に関節リウマチの可能性を考慮して検査を行い、もう少し早期に診断できたかもしれません」と菊池医師は指摘する。
関節リウマチは、早期に治療を開始し、適切な薬物療法を継続することが関節破壊の防止に極めて重要である。近年は治療薬の種類が増え、生物学的製剤やJAK阻害薬などが登場したことで、手指の変形に至る患者は激減している。新井さんも診断後すぐに治療を開始し、症状は改善。現在は寛解状態を維持している。
日常生活での注意点と医師のアドバイス
関節リウマチ患者が日常生活で気をつけるべき点について、菊池医師は「関節に負担をかけないよう適正体重を維持すること、ウォーキングなどの適度な運動で筋力を保つこと、カルシウムやビタミンDを摂取して骨粗鬆症を予防することが大切です」と話す。反対に避けるべきことは、関節を酷使するマラソンなどの激しいスポーツや、喫煙である。喫煙は関節破壊を促進するだけでなく、治療薬の効果を低下させる。
また、免疫機能を抑制する薬を使用するため、感染症に対する注意が必要だ。「特に肺炎には注意が必要で、定期的なワクチン接種や手洗い・うがいの徹底が重要です」と菊池医師はアドバイスする。
専門医と地域の医師の連携
関節リウマチの専門医は大学病院や大規模病院に限られることが多く、通院が負担になる患者も少なくない。菊池医師は「症状が悪化したときは専門医を受診し、落ち着いている間は地域のかかりつけ医が診るという連携が理想的です。実際、私のクリニックでもそうした患者さんが通われています」と説明する。
新井さんは、自身の経験から医療従事者を志し、看護学校に通い始めた。現在は看護師として働きながら、同じような症状で悩む患者のサポートをしている。「自分の経験が誰かの役に立てれば」と彼女は語る。
関節リウマチは早期発見と適切な治療が鍵となる。非典型的な症状でも、長引く関節痛があれば、一度リウマチ専門医の受診を検討すべきだろう。



