緊急避妊薬(アフターピル)の薬局販売が2025年に解禁されたことで、若年層への対応が新たな課題として浮上している。産婦人科医の種部恭子氏は、薬局販売によって性暴力を受けた子どもたちが支援の網から漏れる危険性を指摘する。
暴力が背景にあるケースの見逃し
種部氏は「子どもたちが緊急避妊薬を必要とするケースでは、暴力が背景にあることが多い。そこに対して“安全装置”が準備されているかというと、そうではありません。今後、これまで産婦人科医が経験してきたことと同じような事例に薬剤師が遭遇したときに、そういう(性暴力を受けた)子どもたちを守れるのでしょうか」と懸念を表明する。
産婦人科医の現場では、緊急避妊薬を求める10代の患者に対して、性暴力の有無を慎重に確認し、必要に応じて支援機関につなげる役割を担ってきた。しかし、薬局での販売では、薬剤師がそのような対応を十分に行えるか疑問視する声が上がっている。
10代妊娠の実態:72%が人工中絶
厚生労働省の調査によると、2024年度の10代の妊娠は1万5102件で、うち人工妊娠中絶が1万844件(71.8%)、出産が4258件(28.2%)だった。さらに出産した女性のうち未婚者は1874件(44.0%)と半数近くを占める。16歳未満の性交同意年齢未満に限ると、妊娠588件のうち人工妊娠中絶が489件(83%)、出産が99件(17%)だった。
種部氏は「10代の妊娠の約72%を占める人工妊娠中絶というのは、“医療機関にたどり着けた人たち”という見方もできます。逆に言えば、10代妊娠の約28%を占める出産は、望んだ出産なのでしょうか。予期せぬ妊娠に気付いたものの、相談する機会を逸したか、妊娠に気付かず出産にいたった可能性が高いのです」と分析する。
性暴力被害の広がりと相談の実態
内閣府の調査では、不同意性交を経験した女性は全女性の8.1%(女性12.3人に1人)に上る。また、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」への2023年度の相談件数は6万9100件に達した。
種部氏は、薬局販売によって、これらの被害者が医療機関を受診せずに緊急避妊薬を入手できるようになることで、性暴力の発覚や支援の機会が失われるリスクを強調する。薬剤師には、性暴力の兆候を見逃さず、適切な支援機関につなぐ役割が期待されるが、そのための研修や体制整備が急務となっている。



