台湾では1996年から離婚後の「未成年子女に対する権利義務」の共同行使制度、いわゆる共同親権が導入され、約30年が経過した。日本でも2026年春に共同親権制度が施行される中、台湾の実践は多くの示唆を与える。台湾の弁護士や専門家への取材から、共同親権の運用実態と課題が浮き彫りになった。
制度より支援体制が重要
イラストレーターでコミックエッセイストのハラユキ氏が、台湾の林姓弁護士に取材したところ、「共同親権という制度そのものより、それを支える仕組みの充実のほうが重要」との指摘があった。特に注目すべきは、各裁判所に設置されている「家事サービスセンター(家事服務中心)」の存在だ。このセンターは、共同養育の推進メッセージや家庭内暴力・性暴力被害者へのケアなど幅広いサポートを提供している。日本の場合、自治体による無料支援がある地域もあるが、自治体格差が大きいのが現状だ。
裁判所の人手不足とADRの現状
高姓弁護士によると、台湾の裁判所も日本と同様に人手不足の問題を抱えており、調停が数カ月に一回しかできないケースもあるという。近年日本では、家庭裁判所を補完する手段として第三者機関によるADR(裁判外紛争解決手段)が注目されているが、台湾では法的効力の強さから、民間ADRよりも裁判所が利用されることが多い。民間サービスを利用する場合でも、家事サービスセンターと連携して活用されるケースが多いという。
共同親権下での具体的な課題と対応策
林弁護士は、共同親権の運用における課題と対応策についても詳しく説明した。父母側から見て参考になる内容を以下にまとめる。
- 法的定義のあいまいさへの対応:父母の協議が必要な「重要事項」と、単独でも決定できる「日常的事項」の内容が必ずしも明確ではないため、紛争の原因になりやすい。そのため、何が「重要事項」に該当するかを明確化して記録することが重要だ。
- 重要事項の意思決定の遅れ・制度の悪用への対応:父母で協議が必要な事項の一部について、同居親が単独で決定できるよう、事前に合意しておく方法がある。
- 地理的距離への対応:父母が遠距離に住む場合は支障が起きやすいため、共同親権にするかどうかを慎重に判断する必要がある。
重要事項の一部を同居親が単独決定できるようにする事前合意は、日本での「親権行使者の指定」や「監護の分掌」に近い制度だ。共同親権になりそうで紛争が心配な場合は、事前に家庭ごとの重要事項を明確化し、単独で決められる分野を合意しておくことが有効な手段となる。
台湾の現状と日本の参考点
林弁護士は、台湾の家事事件サポートは現在も発展・改善の途中だと述べている。1996年に共同親権制度が始まって約30年。同じアジアの台湾の実践は、日本が安全に共同親権を運用していく上で参考になる点が多いとハラユキ氏は指摘する。特に、裁判所の家事サービスセンターのような支援体制の充実が、制度の実効性を高める鍵となるだろう。



