2026年FIFAワールドカップで日本代表がグループステージを突破し、決勝トーナメント進出を果たした。次戦の対戦相手は、大会史上最多5回の優勝を誇るブラジル代表。サポーターの期待と緊張感が高まる中、視聴データ分析会社REVISIOは、今大会から導入された「飲水タイム(ハイドレーションブレイク)」に着目。熱中症対策として前後半それぞれ22分前後に3分間設けられるこの中断時間が、視聴者のテレビへの集中力にどのような影響を与えるのかを分析した。
飲水タイム中は「離脱しないが目は離す」傾向
6月15日放送の「日本対オランダ」(NHK総合、5:00試合開始)の注目度と世帯テレビオン率を毎分波形で分析した結果、どの属性でも飲水タイム中に注目度が下落した。しかし世帯テレビオン率はほとんど変化せず、視聴者は「画面から目を離しながらもチャンネルは変えない」状態にあることが明らかになった。同様の傾向は6月21日の「日本対チュニジア」(日本テレビ、13:00試合開始)と6月26日の「日本対スウェーデン」(NHK総合、8:00試合開始)でも確認され、飲水タイム中の注目度は大きく下落する一方、世帯テレビオン率の下落幅は控えめだった。
ポイント1:飲水後の注目度回復には「試合の緊張感」と「時間帯」が強く影響
オランダ戦(2-2の拮抗展開)では、前半飲水後に個人全体注目度が+1.5pt、男性注目度が+3.1ptと前の水準を超えて回復。失点直後に迎えた後半の飲水後も、個人全体が+0.7pt、女性注目度が+2.2ptに上昇し、男性注目度は維持された。中断を挟んでも試合展開から目が離せない視聴者の意識が表れている。
一方、チュニジア戦(大量リード展開)では前後半ともに飲水後の注目度が回復せず、試合展開によって飲水タイムが「緊張感の切れ目」として機能し、その後の注目度が戻りにくいことが示唆された。
スウェーデン戦では異なる動きが見られた。試合は0-0の緊迫した拮抗状態だったにもかかわらず、前半の飲水後は個人全体で-3.9pt(男性-4.1pt、女性-3.7pt)と大きく注目度が下落したまま戻らなかった。これは「試合展開」だけでなく、朝8時半前という「出勤・通学直前のタイムリミット」が視聴者を強制的にテレビ画面から離脱させた結果と考えられる。
ポイント2:男女で注目度の回復パターンが異なる
オランダ戦前半の飲水では男性+3.1pt、女性-3.3ptと真逆の動きを見せ、試合再開への期待感は男性の方が強く反応する傾向が見られた。一方、チュニジア戦前半飲水では男性-8.7ptに対し女性は+0.1ptと、男性の離脱が大きかった。男性は試合展開によって飲水タイムによる中断が離脱を生み出しやすい傾向にある。
スウェーデン戦後半でも男女差が顕著だった。1-1の失点直後という緊迫した場面で、男性は-4.1ptと注目度を落としたのに対し、女性は-0.1ptとほぼ飲水前の水準をキープ。平日9時半という時間帯が要因で、在宅ワークをしながら中継を見ていたフルタイム勤務層(男性に多い)がスマホやPC画面に目を向けたり、テレビ前から離れた様子が想像できる。
ポイント3:得点シーン直後の飲水は注目度回復の「足かせ」に
チュニジア戦後半飲水(14:30~)は伊東純也選手の3点目(14:28)直後に実施された。大量リード得点直後に試合が止まると、視聴者の気持ちが「もう決まった」として弛緩しやすく、飲水後の注目度回復が最も鈍い結果となった。
新しい「広告枠」としての飲水タイム活用価値
飲水タイムを広告枠として捉えた場合、どのタイミングが最も活用価値が高いか考察した。飲水タイムに入る直前(前3分平均)から飲水タイム中の注目度下落幅が小さかったのはオランダ戦で、前後半ともに-5.5ptにとどまった。早朝(5時台~6時台)で時間的余裕があり、強豪相手の緊迫した展開が影響したと考えられる。
スウェーデン戦も拮抗した展開だったが、下落幅はオランダ戦より大きく、平日の通学・通勤時間帯という物理的な忙しさの影響が示唆された。最も下落幅が大きかったのはチュニジア戦前半(1-0のリード中)の-8.1ptで、日本有利な展開が視聴者の画面離脱を促した可能性がある。
飲水タイムの注目度を最大限高めるには、「勝敗の行方が見えない緊迫した展開」と「視聴者が物理的にテレビの前を離れなくてよい時間帯(早朝や休日)」が影響する。ただし試合展開を事前に把握することはできず、決勝トーナメントでは試合日時が中継直前に決まるため、広告投下の検討時にこれらを踏まえることは難しい。
しかし、いずれの試合も飲水タイム中の世帯テレビオン率は高水準を維持した。サッカー中継ではハーフタイムしかまとまった広告枠がなく、そこで一斉にザッピングされるリスクがある。一方、飲水タイムはわずか3分間で「すぐ試合が再開する」という心理が働くため、視聴者は「画面から少し目を離してもチャンネルはそのままにしてテレビの前にとどまる」状態になる。ながら見ではあるが、テレビ離脱が起きにくい広告価値の高い枠として十分な活用ポテンシャルを秘めている。
決勝トーナメント・ブラジル戦での飲水タイムに注目
グループステージ3試合の分析から、飲水タイムの視聴データには試合展開と時間帯が強く影響することが明らかになった。日本代表の次戦は決勝トーナメント初戦のブラジル代表戦。優勝候補筆頭で世界最高峰のタレントを擁するブラジルとの一戦は、これまでの3試合とは比較にならない緊張感が予想される。放送時間は平日深夜(6月29日26:00~)で予選3試合と異なる。ピッチ上の勝負の行方に注目すると同時に、この「飲水タイム」という3分間に潜む視聴者心理の変化にも注目したい。
REVISIOは、独自開発した人体認識センサー搭載の調査機器を一般家庭のテレビに設置し、「テレビの前にいる人は誰で、その人が画面をきちんと見ているか」がわかる視聴データを取得。広告主・広告会社・放送局など国内累計200社以上のクライアントに視聴分析サービスを提供している。本記事で使用した指標「注目度」は、テレビの前にいる人のうち、画面に視線を向けていた人の割合を表し、シーンにくぎづけになっている度合いを示す。



