文部科学省がまとめた令和8(2026)年版科学技術・イノベーション白書「科学とイノベーションが切り拓く我が国の未来」が、政府の閣議で決定された。第7期科学技術・イノベーション基本計画の初年度に当たる今年の白書は、ノーベル賞受賞者の功績などを交え、政策の方向性をひもといている。
科学とビジネスの近接化を特集
白書は例年通りの2部構成。第1部は、基本計画のキーワードの一つ「科学とビジネスの近接化」を切り口に、政策の方向性を解説。第1章では、ノーベル賞を受賞した2人の日本人の成果を例に、科学技術の成果からイノベーションが起き、ビジネスにつながる流れをまとめた。
ノーベル賞2氏の基礎研究が社会的価値に
2025年、坂口志文・大阪大学特別栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を、北川進・京都大学特別教授が化学賞を受賞。坂口氏は「制御性T細胞」を発見し、自己免疫疾患などの解明に貢献。北川氏は「金属有機構造体(MOF)」を開発し、ガス貯蔵などへの応用が期待される。両氏の基礎研究の成果は、企業との共同研究やスタートアップ創出に発展し、経済的付加価値を生んでいる。
白書は、科学とビジネスの近接化について、官民の投資の巨大化や、基礎研究から事業化までの境界が曖昧になったことなどを背景に説明。地政学リスクの高まりなど国際秩序の不確実性が増す中、科学技術・イノベーションは国力の源泉の性格を強めていると指摘する。
第7期基本計画が目指す「科学の再興」
第2章では、第7期基本計画の政策を解説。基本計画は今年3月に閣議決定され、反転攻勢を目指し抜本的改革を打ち出した。同計画は、大きく3つの潮流(ディスラプティブテクノロジーの国際競争激化、国家安全保障の中核への位置付け、AI for Scienceの急拡大)を踏まえ、日本の研究力低下に対応する。
具体的には、トップ10%補正論文数の世界順位が4位から13位に低下したことや、博士号取得者の停滞、研究開発費の伸び悩みなどを課題として挙げる。6つの柱を掲げ、政府研究開発投資を2026~30年度に60兆円、官民で180兆円とする目標を設定。トップ10%補正論文数を10年以内に3位に引き上げることを目指す。
科学の再興について、白書は「知を豊富に生み、研究の優位性を取り戻すこと」と解説。そのための改革として、研究活動の行動変革、世界をリードする研究大学群の実現、投資の抜本的拡充などを挙げ、国際卓越研究大学制度やJ-PEAKS、EPOCHなどの具体的事業を紹介した。
戦略技術領域とイノベーションエコシステム
戦略的に重要な技術領域として、新興・基盤技術領域17分野と国家戦略技術領域6分野を設定。国家戦略技術領域には、AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙が含まれる。
産学官が結節するイノベーションエコシステムの高度化にも取り組む。第2部では、政府の昨年度の科学技術振興策や、防衛科学技術委員会、海洋プラスチックごみ問題、ドローンによる地下調査などのコラムを掲載している。



