藤本タツキの同名漫画を是枝裕和監督が実写映画化した『ルックバック』(公開中)が、イタリアで開催された「第83回ベネチア国際映画祭」で、映画祭公認の独立賞から計5つの受賞・表彰を受けた。是枝監督は「若い人たちが支持をしてくれた、ということが純粋にうれしいです」とコメントを寄せた。
ワールドプレミアで12分超のスタンディングオベーション
出口夏希と蒔田彩珠がダブル主演を務める本作は、最高賞の金獅子賞などを競うコンペティション部門に出品。公式上映時には、是枝監督をはじめ、出口、蒔田、2人の子ども時代を演じた七瀬ふうり、岡田六花が参加した。
現地時間7日に行われたワールドプレミアでは、5人がレッドカーペットに登場。公式上映後には、約1000人の観客から12分を超えるスタンディングオベーションが送られた。
異なる視点から高評価、学生審査員も満場一致
そんな本作は、現代映画と多様な芸術表現との融合に光を当てる「Cinema & Arts Award」のシネマ&アーツ賞(最優秀作品賞)、人間の尊厳や社会正義、平和などを豊かに表現した作品を顕彰する「SIGNIS Award(シグニス賞)」、18歳の若者たちが審査する「CinemaSara Award(チネマサラ賞)」を受賞。
映画祭最終日の12日には、さらに「UNIMED Award(ユニメッド賞)」の受賞と、「Fanheart3 Awards(ファンハート3賞)」の特別表彰が発表された。
UNIMED賞は、地中海地域を中心とする大学ネットワーク「UNIMED(地中海大学連合)」に加盟する各国の学生が、文化的多様性や異文化間の対話、包摂性、芸術表現の自由などの観点から選出するもの。今回は、コンペティション出品作の中から学生審査員の満場一致で『ルックバック』が選ばれたという。
Fanheart3賞は、ファンコミュニティや参加型文化の研究・普及に取り組むイタリアの文化団体が主催。映画とファンコミュニティーとの結びつきや、新たな創作へと広がる可能性などを独自の視点から評価し、本作を特別表彰に選んだ。
是枝監督「これまでに経験のない事態」と喜びを語る
コンペティションでは賞には届かなかったものの、4つの独立賞と一つの特別表彰を受けた是枝監督は、「これまでに経験のない事態で、しかも10代の方々に選んでもらった賞がその中に2つあって、若い人たちが支持をしてくれた、ということが純粋にうれしいです」と喜びを表した。
現地での反響についても、「公式上映後は本当に熱いリアクションをいただきましたし、特にメディアも含めてイタリアの方の熱が、翌日以降の取材でも非常に伝わってきた」と振り返った。
是枝監督にとって、ベネチアは初監督作品『幻の光』(1995年)が出品された思い出深い場所でもある。「ベネチア国際映画祭というデビュー作の地で、もう一度出発点に立ち返った気持ちです」と心境を明かし、「作品を挟んでの、観客のみなさんとの出会いを大切にしながら、また次へ向かいたいと思います」と決意を新たにしていた。



