中国国営中央テレビが2026年7月6日、原子力潜水艦から発射されるミサイルとして報じた写真は、中国軍が核戦力の柱の一つとなる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発を進めていることを示している。トランプ米大統領が中国の習近平国家主席をホワイトハウスに招いた9月の首脳会談では両国の協調路線が演出されたが、安全保障をめぐる対立は根深い。
射程1万キロ超のJL3、南シナ海から米本土に到達か
7月のSLBM試験発射について、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の報告では、訓練用の模擬弾頭を搭載し南シナ海から発射して、約7300キロメートル飛行して南太平洋に着弾したとされる。中国軍はミサイルの型式を公表していないが、中国メディアは射程1万キロ超とされる最新型の「巨浪(JL)3」だとする専門家の見方を報じた。従来型のJL2の射程は7千~8千キロ程度だ。
元自衛官で東アジアの安全保障情勢に詳しい五十嵐隆幸・目白大学准教授は、仮にJL3だった場合、「米国は戦略転換を迫られる」と指摘する。五十嵐氏によると、JL2を米国本土に届かせるには、中国近海のなかでもより米国側に距離が近い黄海から発射しなければならない。黄海は水深が比較的浅く、発射した戦略原子力潜水艦(SSBN)は逃げ切れずに撃沈される恐れがある。
核抑止力の向上、米軍の戦力分散も
射程が長いJL3なら、水深がある南シナ海から発射しても米本土に届く。陸上の基地が攻撃されても、発見されにくい潜水艦から報復攻撃が可能となり、核抑止力の向上をアピールできる。「米本土に届くミサイルを南シナ海に忍ばせている」となれば、米軍は攻撃型原潜を派遣するなど戦力分散を強いられる。中国の台湾侵攻を仮に想定すれば、米軍が介入するコストは増す。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計では、中国の核弾頭の保有数は1月時点で620発。米国の3700発とは差があるが核戦力を着実に増やしている。中国の国防予算は増加傾向で、軍幹部が「汚職摘発」で相次いで失脚しており、組織の立て直しには時間がかかる。