東京都調布市にあるUR都市機構の神代団地では、伝統的な鷹狩りの技術を応用した「放鷹」による害鳥対策が行われている。鳩やカラスによる糞害やゴミ荒らしに悩む団地で、鷹匠がハリスホークなどの猛禽類を放ち、鳥たちを追い払うことで被害を激減させている。この取り組みは7~8年前から継続しており、管理を担当するURコミュニティの小美濃拓也さんによると、団地の歴史と同じくらい長い鳥との攻防に終止符を打つ効果的な手段となっている。
鷹匠の誕生と放鷹の導入
放鷹を担うのは、株式会社グリーンフィールドに所属する鷹匠の江頭さん。もともと虫や爬虫類が大好きだった江頭さんは、動物関係の仕事に就くことを志し、農業高校の畜産科に進学した。在学中、外部の専門家から猛禽類の保護施設を学校で担えないかというプロジェクトが持ち込まれ、その一環でハリスホークの世話係になったことがきっかけで放鷹の世界に足を踏み入れた。放鷹の現場を見学し、人が鷹を放つ姿に感動し、現在の師匠に直談判して弟子入りしたという。
団地の鳥害の実態
神代団地のような緑豊かな大規模団地は、鳥たちにとって格好の寝床となる。一度テリトリーにされると、住居のベランダに侵入され、糞被害が多発する。特に人の気配のない空き住戸のベランダは巣を作られやすく、放置すれば被害が拡大する。小美濃さんは「カラスやハトとの攻防の歴史は団地の歴史と同じくらい長い」と語る。糞害は悪臭や景観の悪化だけでなく、糞や羽毛を吸い込むことで喘息やアレルギー症状、肺炎などの感染症を引き起こすリスクもある。さらに、鳥の糞は強い酸性を含むため、ベランダの床や外壁、屋根材を腐食・劣化させる。また、ダニやゴキブリなどの害虫を引き寄せる温床にもなる。
放鷹による効果
グリーンフィールドが放鷹による害鳥対策を始めたのは15年前。当時、こうした活動をしているところはほとんどなかったという。放鷹では、鷹匠が訓練されたハリスホークを放ち、鳩やカラスを追い払う。鷹は捕食者としての存在感を示すことで、鳥たちに危険を認識させ、団地を避けるように仕向ける。これにより、糞害やゴミ荒らしが激減した。小美濃さんは「放鷹は非常に効果的で、継続することで鳥たちが団地をテリトリーとしなくなる」と説明する。
今後の展望
放鷹による害鳥対策は、神代団地だけでなく、他のUR賃貸住宅でも導入が検討されている。動物好きな女性が鷹匠を目指すルートもできつつあり、江頭さんのような若い鷹匠が増えている。放鷹は環境に優しく、化学薬品や殺傷を用いないため、持続可能な害鳥対策として注目されている。



