防衛省は、呉市の日本製鉄(日鉄)瀬戸内製鉄所呉地区跡地に整備を進める「多機能な複合防衛拠点」について、施設の配置イメージ図を公表した。自衛隊で使う武器など装備品の製造に携わる民間企業誘致エリアのほか、無人機の製造や試験を行う施設など13区画に分けて整備する。同省は2028年度以降に整備に着手する方針で、来年度予算案に関連経費を盛り込む。
配置イメージ図の内容
複合防衛拠点のイメージ図は、広島市内で9月中旬に開かれた同省と県、呉市、日鉄による協議の場で示された。協議は冒頭のみ公開され、同省の松浦紀光・地方協力課長は「どういう施設ができるかなど、より分かりやすく説明する努力を続けていく」と述べた。
配置イメージ図によると、防衛生産・技術基盤を担う企業を誘致する民間企業誘致エリアのほか、岸壁の近くには水上・水中無人機の製造や整備、試験を行うエリアを置く。艦船への補給整備施設や火薬庫、燃料タンク、通信設備、艦船やヘリコプターでの物資輸送に使う防災拠点などの配置も明記された。
整備の進め方と背景
同省は今年8月に、日鉄と跡地(約140ヘクタール)を購入する契約を締結した。日鉄が設備の撤去を終えた区域から、段階的に整備を進めていく方針だ。
国が呉市に複合防衛拠点を整備する背景には、防衛力の抜本的強化を図る狙いがある。呉には海上自衛隊呉地方総監部が置かれ、陸上自衛隊海田市駐屯地や米軍岩国基地などにも近い。多数の艦艇の母港にもなっており、同省は呉地区について「太平洋や日本海、南西方面へのアクセスが良好であるなど、地理的に重要な位置にある」と説明しており、今後も重要性は増していくと見込む。
企業誘致と地域の期待
民間企業誘致エリアを巡っては、すでに9月1日から参画を希望する企業の募集がスタートしている。防衛拠点の関連費用は国の来年度予算案に盛り込まれ、来年5月頃には誘致企業が決まる予定だ。
呉市は、人口減少が本格化する中、巨額の投資が見込まれる複合防衛拠点を地域経済活性化のきっかけとしたい考えで、早期整備を求めている。一部の市民には有事の際に攻撃目標となることを懸念する声もあるが、新原芳明市長は防衛拠点の整備で「攻撃に対する抑止力を高めることが、わが国への攻撃可能性を低下させることになる」とする。
呉市は、民間企業の誘致にあたっては、地元企業への配慮や地域住民の雇用などを要請する。新原市長は「最も期待できるのは、世界でも最先端の研究や開発、製造が行われるということ。世界の若者から注目される呉市になる」と語る。