ミズーリ州西部のルート66沿いにある飲食店の入り口に、こう書かれた看板が掲げられている。「この店は政治的な正しさに配慮しません」「気に障るようなら、どうぞお帰りください」。
記者が遅い昼食をとるために店に入ろうとしたところ、この看板に立ち止まった。よく読むと、店の方針が列挙されていた。スタッフが「神よ、アメリカを祝福したまえ」「メリークリスマス」と言うこと、国旗に敬意を表し祈ること、軍人や警察官、消防士、教育者に感謝すること――。これらが気に入らない人は「どうぞお帰りください」という趣旨だ。
「政治的正しさ」への反発
「政治的に正しい」とは、人種や宗教、性の多様性などに配慮し、差別的、排他的と受け取られる言動を避ける姿勢を指す。アメリカ社会の多様化に伴い、異なる背景を持つ人々への配慮が規範のようになってきた。
その規範を覆したのが、2016年大統領選で勝利したトランプ氏だ。本人が規範を破る言動を繰り返すことで、率直に発言できなくなったという人々の不満をすくい上げた。
この看板の前を素通りできず、店員に尋ねると、経営者が戻ってくるのを待つことになった。
経営者が語る看板の狙い
しばらくすると、経営者の男性が大型バイクで戻ってきた。看板の狙いについて、「私たちの立場を知ってもらうためです。これが私たちですから」と説明した。
男性はトランプ氏が選挙戦を戦っていた2016年、妻と文面を練り、弁護士に法律上の問題がないことを確認してから店に掲げたという。示したいのは、自分たちの信仰や愛国心を隠すつもりもないという姿勢だ。最近は、キリスト教徒以外への配慮から、公の場で「メリークリスマス」を口にしにくくなっているという。
看板への苦情はこの10年間で「3、4件」。地元の人からはないという。男性は出身地のカリフォルニア州よりミズーリ州の方が居心地がよいと話し、理由は「自分自身のままでいられるから」だとした。カリフォルニア州で同じ看板を掲げれば「迫害される」と心配になるが、ここなら価値観を表に出せるという。
ハイウェーに外されたルート66
店を出て再び西へ走ると、ミズーリ州西部で道が大きく二つに分かれる。記者がたどるルート66はそのまま西へ延び、カンザス州に入る。州内を走るのは約13マイルで、その先でオクラホマ州へ抜ける。一方のハイウェーは違う。