韓国の電気自動車(EV)市場で、中国ブランドの存在感が急速に高まっている。2024年上半期の新規登録台数は前年同期比で約3倍に拡大し、特に価格競争力の高いモデルが若年層を中心に支持を集めている。
中国勢の躍進、価格と性能で存在感
韓国自動車産業協会(KAMA)のデータによると、2024年1~6月の中国ブランドEVの新規登録台数は約1万2000台に達し、前年同期の約4000台から大幅に増加。市場シェアは約5%から15%へと上昇した。特に、BYD(比亜迪)や上海汽車(SAIC)傘下のMGなどが好調で、BYDの「ATTO 3」は韓国市場で最も売れた中国製EVとなった。
「中国メーカーのEVは、同等の性能を持つ韓国や日本、欧州のモデルと比べて価格が20~30%安い。これが消費者にとって大きな魅力だ」と、ソウル大学のキム・ジュンヒ教授は指摘する。実際、ATTO 3の韓国販売価格は約4000万ウォン(約440万円)で、同クラスの韓国製EV「ヒョンデ・アイオニック5」の約5000万ウォン(約550万円)を大きく下回る。
韓国政府の政策と消費者の変化
韓国政府は2030年までにEVの新車販売比率を50%に引き上げる目標を掲げ、購入補助金を支給している。しかし、補助金は車両価格に応じて段階的に減額されるため、低価格の中国製EVが優遇される傾向にある。2024年の補助金制度では、5000万ウォン未満のEVに最大500万ウォン(約55万円)が支給されるが、中国製EVの多くがこの条件を満たしている。
また、消費者の間では「環境性能だけでなく、コストパフォーマンスを重視する傾向が強まっている」と、現代自動車の関係者は述べる。特に20~30代の若年層では、ブランドよりも実用性を優先する層が増えており、中国製EVの需要を押し上げている。
韓国メーカーの対応と今後の展望
一方、韓国国内の完成車メーカーである現代自動車と起亜自動車は、中国勢の台頭に対抗するため、低価格帯のEV投入を加速している。現代自動車は2024年末に発売予定の新型EV「キャスパー・エレクトリック」を3000万ウォン台(約330万円)に設定し、中国勢に対抗する方針だ。また、バッテリーの現地生産拡大や充電インフラの整備も進めている。
しかし、業界関係者の間では「中国メーカーはバッテリー技術でも急速に追い上げており、価格だけでなく性能面でも差が縮まりつつある」との声がある。実際、BYDの「ブレードバッテリー」はエネルギー密度と安全性で高い評価を得ており、韓国市場でも認知度が向上している。
韓国輸出入銀行の調査によると、2025年には中国ブランドEVの韓国市場シェアが20%を超える可能性があるという。韓国政府は、中国製EVの急増が国内産業に与える影響を注視しており、補助金制度の見直しや技術協力の促進を検討している。



